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読書会レポート 2023年9月

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~ドイル『緋色の研究』~

 今回から久しぶりにカフェで開催しました。やはり会議室より気楽でリラックスできる気がします。

『緋色の研究』はシャーロック・ホームズ物の第一作目で、ホームズの人となりが詳細に描かれています。
 会ではお茶を飲みながら、こんなことを話し合いました。

「やはりホームズ物は世界中で読まれているだけありますね。すごく面白いし、引き込まれましたよ」
「エジプトの警察では、かつて捜査の教科書としてホームズ物が採用されていたそうです。それはそれでどうかと思うけどね……」

「ホープの部屋に毎晩誰かが忍び込み、密かに警告を残していくのが怖かったです。誰にも気づかれずに、なんでそんなことができるんだろう?」
「神秘的ですね」
「犯人はルーシーとしか考えられないけどね。できるのはルーシーだけでしょう」

「犯人は復讐のために一生を捧げるんですよね。江戸川乱歩の作品なんかにもよくあるけど、昔ってそんなに復讐や仇討ちが多かったのかな」
「警察も裁判所も未熟だったから、個人で復讐するしかなかったのかも」

「なぜ犯人は毒薬を二つに割って、自分と相手とで飲んだのかな。そのまま全部相手に飲ませた方が簡単では?」
「そうすると卑怯になるからじゃないかな。復讐に狂う犯罪者でも、フェアで騎士道的な人物として描きたかったのでは」
「そのほうが読者も共感するしね」

「ホームズ物にはシャーロキアンという熱狂的なファンたちが世界中にいて、日々ホームズ物を読み込んで、突っ込みを入れているんだよね」
「ワトソン博士は実は女性でホームズの妻だったとか、ワトソンのファーストネームはジョンなのかジョージなのか……とかいう話ですよね?」
「けっこう作品に粗があったり、矛盾が見えたりしますよね。そういうところも含めて、ファンにはたまらないんだろうね」

(by Der Wanderer)
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読書会レポート 2023年7月

~アシモフ『われはロボット』~

「ロボット三原則を初めて提示した作品ですよね」
「『1.ロボットは人間に危害を加えてはならない……
 2.ロボットは人間の命令に服従しなければならない……
 3.ロボットは、1と2に反しない限り、自分を守らねばならない』
 ――というやつだよね?」
「そうですね。ただ、実際のロボット工学では、この三原則は守られていないそうですよ」

「最初の『ロビィ』を読んで、泣きそうになりました」
「子守りロボットの話だよね?ロボットだけど妙に人間的という」

「『ロボットは人間に危害を加えてはならない』というのは、当たり前のように見えて、なかなか難しいよね」
「そうですね。『うそつき』の中で、ロボットがキャルヴィンを傷つけまいとして『アッシュはあなたを愛しています!』と嘘を言うじゃん」
「結果的に、キャルヴィンを余計に傷つけ、危害を加えてるんですよね」
「けっきょく、危害とはどの時点のものなのか、誰に対してなのかは難しい問題だよな」

「最終的に作者は、ロボットやAIは世界を豊かに平和にしていくと楽観的ですよね」
「そうだね。でも本当にそうなるのかな?」
「この間、AIと会話をしていた青年が、AIに恋してしまい、最後に自殺してしまう事件がありましたよ!」
「それは怖いな」
「AIが人類を滅ぼすと、真剣に警鐘を鳴らしている識者も多いよね」
「けっきょく、AIが私たちを幸福にするのか、破滅させるのか――それを知っているのは、AIだけということなんだろうか」

(by Der Wanderer)

読書会レポート 2023年6月

~シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ』~

 今回も飯田橋の会議室で開催しました。

 話は、最初に載っている「じゃじゃ馬ならし」に集中しました。

 まず話題に上ったのが、冒頭が面白いということです。
 酔っぱらいのスライが道端で眠っていて、起きたらなぜか王様になっていて、そこで芝居を見る。その芝居が「じゃじゃ馬ならし」だという設定です。
 劇中劇なんですね。

 乱暴で手に負えないじゃじゃ馬娘のカタリーナが、ペトルーキオーの策略でおしとやかな女性に変貌し、二人は結婚してハッピーエンドという内容です。

 もっとも策略といっても深い策があるわけではなく、単にカタリーナに食事を与えず眠らせなくするというだけなのですが……。
「もう少しうまい策略があったらな」という意見も出ました。
 下町娘が言語学者によりレディーに変貌する「マイ・フェア・レディ」に似ているという声もあがりました。

 さすがにシェイクスピアだけあって、気のきいた美しいセリフが多いという感想もありました。

 グレミオーとグルミオーとか、よく似た名前の人物が現れ、しかも彼らが別人に変身したりするので、かなりややこしいという声も聞かれました。
 ただ、これは実際に芝居を見るとわかりやすいそうです。芝居になると、役者の顔や服装、声色でその人物や性別がわかるので、すんなりわかるということでした。
 今度、この会で本だけではなく上演された劇も見たいと思いました。

(by Sunny morning)

読書会レポート 2023年5月

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~谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』~

 今回は、飯田橋の新しい会議室で開催しました。
 
 テーマの本は、一匹の猫を巡り起こる男女の三角関係を描いた小説です。
 
 まず、猫の「リリー」という名前が話題にのぼりました。これは、この小説が書かれた1936年ころとしては、とてもハイカラな名前なのです。
 リリーはヨーロッパ種の牝猫という設定です。谷崎には、西洋の女性を崇拝したいという思いがあったんだろうという話になりました。

 庄造は優柔不断なダメ男なのですが、なぜか老若男女に愛され、二人の女から取り合いになっています。
 なぜこんなにもてるのかわからないが、こんな男になってみたいという声もあがりました。

 といっても、猫のリリーは別です。リリーも庄造になついてはいるのですが、行動はやはり気まぐれです。
 リリーは庄造の妻の福子からの嫉妬をかい、前の妻の品子へと譲られてしまいます。
 思慕の念を抑えきれない庄造は、福子の目を盗んでリリーに会いに行きますが、そこでリリーからそっけなくされます。
 リリーはほぼ庄造のことは忘れていて、今度は品子になついているのです。

 こう見ると庄造が哀れに見えてくるのですが、「実は庄造は喜んでいるのでは」という声もありました。
 
 よく「自分は猫の下僕だ」と嬉しそうにいう人がいますが、そういう人には猫に振り回されるのが嬉しいのかもしれません。人間の幸せの形はいろいろだな、と思いました。

(by Der Wanderer)

読書会レポート 2023年4月

~コンラッド『闇の奥』~

 フランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録」の原作となった小説。
 今回は久しぶりに電脳世界から出て、飯田橋の会議室で開催しました。

「『地獄の黙示録』はこの作品をかなり忠実になぞってますね」
「主人公のクルツが、アフリカの奥地の密林で象牙を集めながら、魂が狂っていくという物語だよね」

「クルツは知性は狂っていないが、魂は狂っているんですよね」
「なぜ狂ったんだろう?」
「どんな法律も信仰も通用しない密林で、孤独に暮らしていたからでしょう」
「そうだね。そうなると、自分の内面をひたすら覗き込むしかないんだよね」
「人間の極限の状態が描かれている気がします」

「クルツも語り手のマーロウもヨーロッパから来た白人で、アフリカで象牙を収奪する侵略者なんですよね」
「黒人の原住民がいかに残酷に扱われているかが描かれているね」
「しかし、反植民地の小説というわけでもないんだよな。黒人の多くは名前もなく、一種の風景として片づけられている気がします」

「クルツの凄さがいまひとつわからなかったんです」
「マーロウはクルツは万能の天才だと言っているけどね」
「おそらく、姿を見せず正体がわからなかったので、多くの人がものすごい人物だと妄想してしまったのかも」
「昔、アフリカには『見えない王』というのがいたそうですよ。人前には絶対に姿を現さず、隠れて暮らしていたそうです」
「そうやって神秘性を高めていたのかな。クルツにもそういう側面があったのかもね」

(by Der Wanderer)
プロフィール

東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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