FC2ブログ

読書会レポート 2020年1月

~モンゴメリ『アンの青春』~

このたび、選書する機会をいただき「アンの青春」をテーマにしました。「赤毛のアン」を絵本やアニメで知っていたとしても、続編である「アンの青春」を小説で読む機会はなかなかありません。自分が予備校講師をしていることもあり、寂しい子供たちや傷ついた大人たちがたくさん登場する本書を、深く掘り下げてみたいと感じていました。

本書には、英米文学や聖書からの引用・パロディが豊富です。読書会で仲間と意見を交換するうちに、児童文学という枠を超えた本書の普遍性が、ぐいぐいと胸に迫ってきます。初めて東京読書会に参加された方も、養母マリラのような雰囲気の司会者とともに、みずみずしい感性で丁寧に言葉を紡いでいらっしゃいました。

珠玉の一文もいくつか紹介されました。なかでも、アンを長年に渡り愛読されている方がご紹介くださった第19章「幸せな一日」の冒頭が、自分のなかでは特に印象的でした。

「結局、幸せで楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くようなこと、胸ときめくようなことがおきる毎日ではなく、さりげない小さな喜びに満ちた一日が、今日、明日としずかに続いていくことなのね、まるで真珠が一つ、また一つと、糸からすべり出ていくように」

自分が教える予備校には、受験に失敗し再起を目指す若者たちだけでなく、我が子の将来を気が狂わんばかりに思い悩む親も相談にいらっしゃいます。大学進学をあきらめ、16歳で若き教師となり前向きに生きるアンの成長は、充実した青春について問いかけているようです。

「アンの青春」には、他にも幼くして両親と死別した双子の孤児や、45歳独身女性のロマンスなど、現代日本の複雑化した社会でこそ見直したいエピソードが満載でした。喫茶室での2時間だけで議論し尽くすことは到底できず、食事会でもモンゴメリの枠を超えた文学談義から映画・芸術の分野にまで話題が及び「さりげない小さな喜び」を満喫いたしました。今こうしてレポートを作成している自分の中にも、爽やかなプリンスエドワード島での登場人物の会話がいくつも「こだま」となって跳ね返ってきます。

「人に知識を与えることには、さほど興味はないの。もちろんそれは何よりも崇高な目的だけど、でも私は、私がいることで、より楽しいときをすごしてもらえたら嬉しいの」

「やがてまわりの人たちは、その名を聞くだけで、優しく心地よい気持ちになって、名前がもともとすてきじゃなかったことなんて、考えもしなくなるんだわ」

(by 李権二 )

スポンサーサイト



読書会レポート 2019年11月

~ヘミングウェイ『老人と海』~

今回の読書会では、アーネスト・ヘミングウェイ作『老人と海』を紹介させていただきました。

 『老人と海』という作品について、「題名は聞いたことがあるけど、まだ読んだことはない」という方はけっこういるのではないでしょうか。そんな方のために、少しだけ内容を説明します。

キューバのとある貧しい漁村に、漁師として暮らしている老人がいます。妻に先立たれ、身寄りのない老人ですが、彼には漁師仲間であるひとりの少年がいます。少年は老人のことをいつも気にかけ、ときに身の回りの世話などをしてくれます。少年はかつて老人と一緒に漁に出ていたのですが、長い間不漁が続き、父親から老人と漁に出ることを禁止されています。
 老人はある日、いつものように、夜明け前の暗がりの中を、ゆっくりと船をこぎだします。そしてついに、彼の人生で見たこともないような大物と対偶するのですが…。

 この作品では、老人の孤独な闘いが力強くドライに描かれています。しかし、この作品にあるのは孤独や厳しさだけではありません。少年の老人に対する思いやり、そしてなにより、海とそこに住む生き物たちに対する、老人の深い愛情と尊敬の念を、ヘミングウェイは優しく描いています。

 読書会では、漁業が盛んなところで育ったため、とても感情移入できたという方や、なぜ老人は大物だけを狙うのか理解できないという方など、様々な意見を持った方がいました。

 『老人と海』は私にとって、とても大切な作品なのですが、読書会を通じて初めて作品を知っていただいた方や、読んだことのある方でも、新しい発見ができたという方がいたならば、今回の読書会はとても意味のあるものになったと思います。

By (N.M)

読書会レポート 2019年10月

~デフォー『ロビンソン・クルーソー』~

今回の課題本は「世界一めげない男」が主人公。

有名だけど、そう言えばきちんと読んだことが無かったダニエル・デフォー著『ロビンソン・クルーソー』です。

●出会えてよかった!

課題本でなければ読まなかった。冒険談だけではなく楽しかった!読んでよかった。

面白くて、すぐに続み返した。2度目は地図をチェックしながら。面白さ倍増。

●オウムが友達

たった独りで暮らすなんて、自分なら発狂する。幻影とか見そう。

独りだったから、余計な意見に惑わされず、すべきことをし、生き抜くことが出来たのでは。

フライデー、いいキャラだけど、独りの時の話が好き。

●マメですな

火薬を事故にならないよう小分けにし保管するなんてエライ。

島で独りなのに、作ってでも服を着るなんて、英国人らしい。

創意工夫が鉄腕ダッシュみたい!

●めげない男

現代にも通ずる、前向きになる為のヒントがあった。

唯一の書物が競馬新聞じゃなくてよかったね。

●こういう人、いるよね

反省し神に感謝し、でもまた踏み外したくなっちゃう…そういう性。

●気づけば28年

自分は無人島で28年も暮らせるかな?

見通しが立たない幸せ。初めから28年と知らされたら狂いそう。

28年がギュッと詰まっていて、疲れたー!

●子供の頃の記憶はターザンっぽいことしてるロビンソン。東京島や、津波に風、ダッタン人、チーズの作り方にも話題は飛んだ。そしてやっぱり彼のその後が気になる。

 今もどこかを冒険しているような、そんなロビンソンと出会えてよかった!

(by ユ)

読書会レポート 2019年9月

~石川達三『青春の蹉跌』~ 

 あまりにも暗く、打算に満ちた青春である。
 明晰な頭脳と恵まれた容姿を持ちながらも、人との関わりの中で破綻する栄達への階段・・・。そして、遂には実社会への道をも自ら閉ざす主人公の物語。

 作中の人物達から語られる、野心に満ち、敵意に満ち、偏った理屈に満ちた言葉の連なりは、時に苦しくなる程あからさまだ。だが、彼らから放たれる剥き出しの言葉には、単なる身勝手な若者の耳障りな物言いとしては片付けられない本音や真実があるようにも思われ、課題本に推薦した。

 主人公の生き方に関する賛否も大きく分かれ、

・誰も助けてくれない時代だからこそのメンタリティー
・生きるのに必死なだけで、悪人ではない
・父親が生きていたら、状況は全く違っていたはず
・近隣の火事に涙を流す主人公 → やはり彼は普通の人なのだ
・モヤモヤするが、こういったメンタリティーの人は意外といる
・若くして司法試験に受かれば、生意気になって当然

 と、擁護する声が聞かれた一方、

・全く、同情の余地が無い
・法律家を目指すなら、人の気持が分からないといけないのでは?
・子供がこんな風に育ったら、どうしよう・・・

 との意見も挙がった。

 そして、賢いはずの主人公の謎の行動についても触れられた。

・殺人が衝動的すぎる
・死体の始末もされておらず残念
・自分でなんとかしなくては・・という意識が自分の首を締めたのでは?

 更に、

・主人公の成長を見る前に話が終わってしまったことが残念
・学生である主人公に、ビールをせびる従兄の生き様は如何なものか
・主人公の母親に共感を覚える

 など、今回も視点は様々であった。

 また、時代の空気についても多く語られた。
 現在とはレベルが違う貧困が存在したという時代。そして、登場人物が青春時代を捧げ、その後の人生を大きく変えた学生運動。初版から約半世紀を経た今となっては、薄れつつある過去の史実だが、参加者から寄せられる他の作品から知り得た時代背景や作中描写というピースを繋ぎ合わせていく内に、少しずつ補完され見えてくる景色がある。

 月に一度、会を通じて出逢う、長く読み継がれる一冊の本。
 その作品を、現在の社会に照らし、今を生きる私達の感覚や尺度を持って話し合うことは、大変興味深いと思う。

(by C.K.)

読書会レポート 2019年8月

 ~夏目漱石『三四郎』~

 熊本の田舎から上京した大学生・三四郎が、美禰子や与次郎といった都会人に翻弄されながら生きていく姿を描いた、漱石の新聞連載小説です。

 会では、こんな言葉が交わされました。

「ものすごく久しぶりに読みました。実は、高校生の時にこの作品を読んで、密かに東京に憧れて、大学のときに本当に上京しちゃったんですよ」
「今でいうとライトノベルという感じかな。文章が軽やかですよね」

「美禰子という人物像がよくわからない。三四郎を翻弄するようにふるまって、結局、違う男と結婚しちゃうんですよね。そもそも美禰子は三四郎が好きだったんですかね?」
「好きなようにも取れるけど、何を考えているかよくわからない女性ですよね。まわりの男すべてに気のあるふりをしてるんですよね……」
「漱石の描く女性って、こういう不可解で神秘的な人が多いんですよ」
「男を振り回す自分に酔っている感じですね。私も女性だけど、こんな女性とはお友達になりたくないなあ」
「いえ、私は美禰子のことがよくわかりますよ。自分の意志を持った新しい女性ですよね。いろんなことを試してみて、あまりうまくいってないけど、その姿を漱石は優しく描いていると思う」
「田舎から出てきた三四郎にしたら、レベルの高すぎる女性。三四郎がかわいそうですよ」
「といっても、三四郎は二十三歳のわりには、精神年齢高いですよねえ。さすがに今の学生とは違うんですね」

「美禰子の話が多いですね。私はむしろ与次郎が好きだなあ」
「そうそう。やたらと口がうまくて、おしゃべりで、あっちこっちかき回しては事態を大事にするいたずら者。でも笑えるし面白いですよね」
「あと、広田先生がいい。万年高校教師で、教養はあるけど不器用で、出世欲がまるでなく、淡々と生きていく仙人のような人。憎めないですよね」

 私としては、すでに百回くらいは読んだ小説なのですが、改めて読み返してみて、読み逃していたところも多かったことがわかりました。
 そのことだけでも、今回の読書会は収穫でした。

(by Das Wandern)
プロフィール

東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


メールはこちら

Facebookページ

Twitter

主催者・杉岡幸徳のウェブサイト

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR