第34回 読書会レポート

~ヘルマン・ヘッセ『デミアン』~

ヘルマン・ヘッセの作品は青春小説ばかりの印象をもっていましたが、その中でも「デミアン」は不思議な力をもつ大人びた少年が出てくる変わった作品と覚えており、読書会の本として「デミアン」(高橋健二訳、新潮文庫)を選択しました。

本のカバーには、「主人公シンクレールが、明暗二つの世界を揺れ動きながら、真の自己を求めていく過程を描く」と書いてあり、不良少年に金をせびられるシンクレールをデミアンが救い、シンクレールはデミアンの導きも受けながら、「真の自己」を追及していくという内容です

この本は読み進めていくと、宗教(キリスト教)や哲学の話が多いために理解しづらく、キリスト教の異端思想が出てくる不気味さもあり、本の選択を間違えたと後悔しました。しかしながら、読書会ではたくさんの意見が参加者より挙がったので、そのいくつかを以下に紹介します。


・神や悪魔、キリスト教異端思想が描かれ、スピリチュアル的なものが感じられた。現代のライトノベルのファンタジーにも出てきそうな話でもある。オカルト小説として読む分には面白い。

・デミアンはアベルを殺したカインを賛美し(旧約聖書のカインとアベルの話)、自分たちには「カインのしるし」があると考えるのは選民思想的だ。

・アイデンティティーの確立が作品のテーマであるが、キリスト教や社会に対する批判が多く、予言書みたいに感じられた。

・宗教的な話が多いが、自己を求めていくのは哲学的でもある。自己の追求といった思想は現在にもあるが、いつごろからあるのだろうか?

・デミアンの超能力(?)など、ところどころになぞめいた場面があり、想像力をかきたてられる。不完全な作品であるが、そこがこの作品の魅力でもあり、惹きつけられる人がいるのだろう。

 
読みづらいとの意見が多く挙がりましたが、思想や宗教にある程度通じていて、背景を理解できる人には「デミアン」は面白いのかもしれません。また、高橋健二氏の解説によると、第1次世界大戦後の迷えるドイツ青年に衝撃を与えたとあり、敗戦後のドイツでは宗教批判や社会批判を含んだ小説は需要があったのでしょう。世の中にはさまざまな考えの人がおり、時として思想や宗教は争いの原因にもなります。今回の読書会では不適切な本の選択をしてしまったと当初は不安でしたが、無事に終了することができました。

最後になりますが、読書会ではそんな読み方もあったのかと自分とは違った解釈にいつも気づかされたりします。また、豊富な知識をもった方も参加しており、自分の知らない知識を得ることができたりもします。一人で本を読むのとは違った楽しみが得られ、今回も有意義な時間を過ごすことができました。
武田


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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

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