
読書会レポート 2015/2/1


~バルザック『ゴリオ爺さん』~
文学史の中でも極めて文学性が高いとともに大衆性にも富んでいると評価される本作品。一方で、読書会でこれまで取り上げられてきたテーマの中では比較的長く、また冒頭の緻密な背景描写や台詞の怒涛など独特な部分もあるため、今回参加者が集まってくださるか、ドキドキしながら臨みました。結果は予想をはるかに超える賑わい振り!さすがは読書会の皆様です。教えていただき初めて知ったのですが、今話題のピケティの著書でも取り上げられているようですね。「面白かった」「読んで良かった」などの感想を伺うと、何とも言えず嬉しい気持ちになりました。
ただでは死なないゴリオ爺さん始め、バルザックの小説群には数々の魅力的なキャラクターが登場します。中でも読書会人気の特に高かったのは、不死身の男ヴォートランでした。稀代の悪党でありながら、善悪を超えて生きていこうという意欲、それを促す生命の息吹のようなものを彼は体現しているのかもしれません。同時にその存在自体が当時の(おそらく現代に繋がる)痛烈な社会批判、すなわち「パリ」への辛辣な批評となっているのでしょう。もっとも、バルザック自身は「パリ」に対する厳しい眼のみならず、一見相容れない深い愛情をこの情熱の舞台「パリ」に注いでいるようにみえます。作風についても、例えばユゴーのように最後は人間の良心に託すというような楽観性は希薄になっていますが、ゾラのような身も蓋もない人間観では満足できない、といった「ロマン主義」と「自然主義」の両方のエッセンスを含んでいるように感じました。このような両義性が、この作品の一つの大きな魅力を作り上げているのではないでしょうか。
今回も皆様のおかげで素晴らしい一時を過ごすことができました。心よりお礼申し上げます。
(by おはぎ)
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