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読書会レポート 2021年8月

~ドイル『回想のシャーロック・ホームズ』~

――ホームズ物の二冊目の短編集ですね。

――ホームズ物はほとんどが盟友のワトソンが書いたという設定ですよね。客観的に書かれているから面白い。

――ホームズは部屋を大混乱させて、とてもだらしない男ですよね。でもそこがいい。母性本能をくすぐられる。たとえ女嫌いであってもね。

――「マズグレーヴ家の儀式書」がよかった。ホームズが初めて手掛けた事件の話。ドラマチックですよね。

――ホームズの兄であるマイクロフトが出てきますよね。彼が通っている「ディオゲネス・クラブ」に行ってみたい。ロンドン中の人間嫌いが集まる場所で、クラブ内での会話は一切禁止。ひたすら黙って新聞や雑誌を読み続けるという。このマイクロフトもホームズに優るとも劣らない変人ですね。

――ホームズ物は有名だけど、意外と読んでない物が多いとわかって驚きました。

――「最後の事件」に出てくるモリアーティー教授が面白い。ホームズ曰く「犯罪界のナポレオン」で、ロンドンのあらゆる犯罪の元締めである。しかし本人は全く表には出て来ず、ただの数学者だと思われている。このモリアーティー教授とホームズが対決するわけですね。

――しかし、モリアーティー教授のことを語っているのはホームズだけで、誰もその存在を知らないんだよね。だから、モリアーティーはホームズの妄想だという説まであるんだよ。

――最後にホームズとモリアーティーは、スイスの渓谷で一対一の決闘をし、ともに奈落に吸い込まれていくわけですが……モリアーティーは決闘の前に、ホームズに手紙を書き残すことを許してますよね。なぜこんなことをしたのだろう。

――モリアーティーをただの下劣な悪人として描きたくなかったのだろう。作品をよく読むと、ホームズもドイルも、モリアーティーをどこか称賛していますよね。だからモリアーティーを、宿敵と一対一の闘いに挑んで死んでいった、悪人だが誇り高いジェントルマンとして描きたかったんじゃないかな。

――「最後の事件」でホームズは死んだことになってますよね。これが当時の読者には非難号号で、ドイルへ抗議の手紙が殺到したらしい。ロンドンっ子たちは、ホームズの死を悼む喪章を胸につけ、街を歩いたという話もある。それほどホームズの存在がリアリティを持って受け止められていたんだろうね。

(by Der Wanderer)
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東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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