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読書会レポート 2015/3/1

~ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』~

「百年の孤独」で有名なガルシア=マルケスの短編です。「百年の孤独」は読書会で取り上げるには長いですが、この作品はちょうど良い長さなので推薦しました。
私の班では初めて読むという方が大半でしたので、なかなか良い選択だったのではないかと思っています。

名前しか出てこないような端役まで含めると43人もの登場人物がおり、一人一人の人物よりも町を描くということが作者の狙いだったのではないかと思いました。淡々とした描写に登場人物に感情移入が出来ないという意見もありました。

サンディアゴ・ナサールが本当の姦通の相手ではないという意見が多く、ではなぜ彼の名前が挙げられたのかということが話題になりました。単に嫌われ者であったというものから、アラブ人だったから、成功者への妬みなどいろいろな見方がでました。いずれにしろ殺されるほど嫌われてはいなかっただろうという意見が多かったです。

また、アンヘラの相手がバヤルド・サン・ロマンではなく町の男であったならば、生娘でないことをそれ程問題視することもなく、このような殺人事件は起きなかったのでは?という意見も出ました。

なぜならば、アンヘラの女友達が処女でないことを隠す技法に長けていることや、男たちも若くして町の娼館に出入りするなど、性に対して大らかな面も見られるため、この町の人々にとって、処女性は尊ばれてはいるものの実際にはそうでないことも多く、男たちもことさら驚きはしなかったのではないかと思うからです。
(祝福に訪れる司教が船から決して降りようとしないのも、この町の性に対しての奔放さを司教が汚らわしいものと感じていたからではないかという意見もありました。)

しかし、よそ者であるバヤルド・サン・ロマンにとって処女性は絶対であったため、花嫁を返すという事態に発展し、そのことがアンヘラやその家族の恥にとどまらず、町の名誉に関わることだと人々が思ったからこそ、ビカリオ一家はその責任をとることを求められ、ビカリオ兄弟はサンディアゴ・ナサールを殺さなくてはならなくなったのだと思われます。
町の人たちが誰かにビカリオ兄弟を止めてほしいと思いつつも、誰も自ら積極的にやめさせようとはしなかったのも、サンディアゴ・ナサールを殺すことが町の名誉を回復する唯一の手段であり、それを阻止することは無言の町の意思に逆らうことになることを自覚していたからだと思います。

サンディアゴ・ナサールの母親だけは息子を助けたかったと思うのですが、息子が中にいると思い門の鍵をかけてしまうという痛恨の勘違いをしてしまうところに「あ~お母さん!」と思った方が多かったようで、その下りでひとしきり盛り上がりました。

バヤルド・サン・ロマンがアンヘラからの二千通余りの手紙を受け、アンヘラを訪ねてくるところには感動した方が多かったです。ただし、手紙を一度も読まなかったことに関しては、なぜ読まないのに訪ねる気になったのか?悪い事が書いてあるとは思わなかったのか?などの意見もありました。

2時間があっという間に感じられるほどいろいろな話が出来てとても楽しい読書会でした。

(by バッシ―)
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