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読書会レポート 2015年3月

 ~スティーブンソン『ジキルとハイド』~

今回は、スティーブンソンがわずか3日で書き上げたという『ジキルとハイド』が課題本でした。イギリス文学としても、はたまた児童向けの本としても、様々な作品に影響を与えた作品といわれています。ページ数からみたら短編作品ですが、内容は濃ゆい濃ゆい。

まずは、タイトル。ジキルは音とスペルからして「自らを殺す」ことの、またハイドはそのまま「隠す」の意味を示唆します。プロットからみて、ジキルとハイドが二重人格として描かれていますが、果たして本当にハイドはジキルの隠れ蓑なのか、二重人格と言えるのか、という議論になりました。ジキルは当人に表される善、そしてハイドに表される悪の両方を兼ね備えている、そして、この作品は果たして善悪の二項対立で割り切れるのか、と皆様の話にも熱が入っていました。

善悪の話題になると、自然と作品の主題に関する話題へシフト。善人であることをステータスにするイギリス紳士への揶揄では?善人ジキルの自己形成の失敗ではないか?など、意見は様々。スティーブンソンが意図した、もしくは意図せず表れたものはなんなのか。読書好きな方にはたまらない議論だったのではないでしょうか。

また、ジキルがハイドになる際に薬つまり科学の力を使ったことについて、これが科学への信頼なのか不信感なのか判断しかねる、という意見がありました。仮にあったとしてこんな薬を飲みたいか、という問いには、飲みたくない方がマジョリティーでしたね。

最後に、作品の結末について。ジキルがハイドから戻れなくなり自殺に至るこの結末には賛否両論。善人になろうという努力ではなく、悪を受け入れればいいんだ、また新たに薬を開発すれば良かったのに、などこれまた様々な意見が出ました。短編でここまで読み込める作品を書いたスティーブンソンの話術には脱帽です。

何はともあれ、この作品がお好きな方々が多かったせいか、終始和やかな読書会となりました。ご参加の皆様、ありがとうございました!また次回も楽しみにしております。

(by m.y.)
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