読書会レポート 2015年7月

~武者小路実篤『友情』~

 青春恋愛小説を読書会で取り上げるのはやや恥ずかしかった。だが、年齢も性別も所属するコミュニティーも異なる人々20~30人が集まる読書会だし、いろいろな恋愛観が聞けるかなと思った。読書会のゆるい人間関係で読み合うものだから、選べた。

 『友情』はヒロインに恋心を寄せる主人公の野島が“ダメ”な男性の設定で描かれる。容姿に恵まれず、小説家としてもまだまだで、スポーツも不得意、目標は高いが常に自分自身に満足していない。ヒロインの杉子を理想化して、杉子の言動に一喜一憂し、彼女に認められることを夢見る。ありのままの生身の杉子を見ていない。それに比べて、野島の友人・大宮は“できた人間”だ。小説家としてはすでに名を知られており、スポーツもでき、実家は裕福、しかも友達思い。

 ところが私は、野島に感情移入して読んだ。野島のダメなところが自分と重なり、わかるからこそ応援したい気持ちになった。最終的には失恋で終わるバッドエンドだが、「この失恋を乗り越えた野島はいい小説が書ける、だからこの失恋には大きな意味がある。“縁”や“運命”なんて誰にもわからない」と野島に言いたい。読後感はさわやかだった。

 参加者の感想は、青春期の恋愛感情の機微が描けていて共感する描写が多々あるというのが概ね。ただ女性陣の野島に対する評価は手厳しかった。総スカンだ。私はその様子を見、野島にはならないようにしようと思った(笑)。つまり、女性を理想化せず、ありのままを見なければと思った。また武者小路実篤の書いた小説で、名前に「野」の字がつく登場人物は本人の投影というトリビア的な話や、細かく描写するのが実篤は苦手であり、そのため杉子の容姿があいまいなままになっているなどの話が参加者から聞けた。『友情』は伏線が効果的に随所に張られているのだがもともとは新聞に連載されていた小説だそうである。それなのにきちんと構成が練られているのはさすがだ。

 読書会も盛り上がったが希望者だけが参加した食事会では『友情』をきっかけに恋愛話に花が咲いた。私は人の恋愛話を聞くのが好きだ。人が人を好きになる気持ちやその人間模様に関心を持つ。その理由は私が人間だからなのだろう。

 「人間に恋と云う特別のものが与えられている以上、それを馬鹿にする権利は我々にはない」のである。

(by.野島)
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