読書会レポート 2015年9月

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~「フォークナー短編集」(瀧口直太郎訳/新潮文庫)~

身分や人種に関する価値観が大きく揺れ動いた南北戦争前後のアメリカ南部を舞台とし、没落貴族や貧しい人々の生き様を描き続けた作家・フォークナーの短編集を扱いました。
フォークナー好きにはお馴染みのヨクナパトーファ郡の物語から、彼の作家人生最初期の作品まで、バラエティ豊かな短編が詰め込まれた一冊です。
難解とも言われるその文体から、アメリカの歴史・文化まで、幅広い議論をたっぷりと楽しんだ2時間となりました。

まず感想としてよく聞かれたのが、その独特な語り口調について、「油断すると何が起きているのか分からなくなる」という声でした。
フォークナーの手法は「意識の流れ」という呼び名でも知られていますが、読者に分かりやすく伝える親切な言い回しや説明がそぎ落とされ、極めて感覚的なモノローグと会話が主となって物語が構成されるため、まるで、登場人物の頭の中に入って目の前の出来事を体験しているような感覚を覚えるのです。
参加者の方の「長回しの映画を見ているようだ」との感想には、言い得て妙なりと思いました。

また、作中に描かれている文化が現代の生活とかけ離れているため、
「こんなことは本当にあったんだろうか?」「どういう時代だったんだろう?」と、作品から離れアメリカの文化に話が及ぶことも多々ありました。
私が参加したテーブルでは、主催者の杉岡さんの粋な計らいで、収録作品のタイトルの元ネタになっている「セント・ルイス・ブルース」を流し、当時の南部の雰囲気に思いを馳せる一時もありました。

まだ人種差別も厳しい時代のアメリカで、なぜフォークナーは、あえて貧しく身分の低い人たちに焦点を当てて作品を書き続けたのか。
議論の場やその後の食事会で度々話にのぼった話題です。
長年フォークナーを読み続けている私もはっきりとした答えは持っていないのですが、
彼の作品全般を通して感じるのは、抑圧されながらも生き抜こうとする人々に対する厳しいけれど称えるような眼差しで、その力強さに惹かれずにはいられません。
同じように受け取った方が多数いらっしゃったのは嬉しかったです。

フォークナーの名は有名なれど、現代においてはあまり積極的に読まれていない作家のため、こうして大勢の方と感想を語り合うことができて感無量です。
参加者の方から「海外作家の作品は売れないので、書店のコーナーがどんどん狭くなっている」という切ない意見がありましたが、フォークナーの読者増加に少しでも貢献できたら嬉しいなと思った一日でした。
主催者様、参加された皆様、ありがとうございました。

(吉村)
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