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読書会レポート 2015年10月

~ヴォネガット『スローターハウス5』~

 日本ではどちらかというとマイナーなイメージのあるヴォネガットを、皆さまどのように読まれたのか…?とても楽しみに参加しました。

 本作は第二次世界大戦の空襲体験がメインテーマであり、またヴォネガット作品に多くみられるSF小説的要素も含まれた作品です。戦争・SFどちらもこの読書会ではほとんど取り上げられなかったジャンルだそうで、「書店でSFコーナーに初めて足を踏み入れた」といった推薦者には嬉しい初体験コメントも聞かれました。

 簡単な自己紹介ののち司会者の進行に沿って各自感想を述べ、様々な意見が交換されます。全体の印象としては

・面白かった(複数)
・こういう戦争の描き方もあるのかと思った
・戦争ものは苦手だが、場面転換がたびたび起こるので苦しまずに読めた
・冒頭部分がいい
・独特の読後感

 等々、読みづらいといった意見もありましたが概ね好意的な感想が多かったです。

 しかしSF時間旅行ものにイメージされるような展開にならない点や、主人公の完全受け身な姿勢については、

・物悲しく感じる
・地球の未来が異星人によって決められているなんてひどい
・主人公は何とかしようと思わないのか
・主人公は何度も同じ過去を経験し、諦めの境地に達したのでは

などの意見が出され、さらに「未来とは」「自由意思とは」といったテーマに対して話が膨らみました。
 未来に対してポジティブな考えを持った方が多く新鮮でしたが、個人的には「自分のために未来を変えたいと思うのは身勝手。現在を一生懸命生きる事が大切」という趣旨の意見を述べられた方がいて心に残りました。

 また懇親会では

・精神に異常をきたしている(と思われる)主人公にすべてを語らせるのはずるい
・事故で脳外科の手術をする部分はいらないと思った

と率直な批判が出され、一人では何度読んでも思い至らなかった視点を得られました。再読する楽しみが増えて嬉しい限りです。

 普段は高尚な文学に親しまれておられるであろう皆さまの口から、「トラル…ナントカ星人が」「モンタナ・ワイルドハックは」とヘンテコな単語が出るたびに、なんとも言えない喜びと興奮で正気を失いかけましたが、無事に終わってほっとしました。

 これまで本作の孤独な読者だった私ですが、皆さまと素晴らしい時間を共有でき嬉しく思います。ありがとうございました。

(なかがわ)
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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

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