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読書会レポート 2015年11月

 ~ドストエフスキー『死の家の記録』~
 
 ドストエフスキーの名前はあまりにも有名ですが、その作品は長く、重く、とにかく読みづらい――というイメージが強すぎるので、この作品を選んでみました。
「実は、ドストエフスキーを読むのはこれが初めてなんです」と告白される方もかなりおられました。

 この作品は、政治犯としてシベリアに流刑されたドストエフスキーが、監獄の内部の様子を執拗に描いたものです。
 シベリア流刑というと、いかにも悲惨で過酷というイメージが付きまといますが、この本を読むと、必ずしもそうではない。
 祭日に芝居を演じたり、こっそり酒を飲んだり、時々外にも出れるし、シベリアでは流刑囚は「不幸な人々」と呼ばれて同情され、寄付やプレゼントが殺到する――といった具合で、「なんか楽しそう」「こんな刑務所なら入ってみたい!」といった好意的な声が続出でした。

他には、次のような意見が出ました。
「すごく読みやすく、面白い」
「囚人たちの会話が滑稽で、コメディみたい」
「『寒い』という描写がほとんど出てこない。寒いのは当たり前だから、わざわざ書かなかったのだろうか?」
「『ロシアからシベリアに行く』といった表現がよく出てくる。この頃は、シベリアはロシアだとは思われていなかったのだろうか?」

 ちなみに、当時のロシアでは、平民の囚人は笞打ちの刑を受けますが、貴族の囚人は免除されます。ただし、監獄の中では、貴族は平民から憎まれ、疎んじられ、冷酷な取り扱いを受けます。
 そこで、「この監獄に入るのなら、平民と貴族のどちらがいいですか?」と参加者のみなさまに聞いてみたら、圧倒的多数が「貴族がいい」とのことでした。
 やはり憎まれようがなんだろうが、笞打ちよりはましなようです。

 それにしても、ドストエフスキーの人間観察力は、あまりにも鋭く、呵責なく、壮絶と言うほかはありません。
「これをきっかけに、ドストエフスキーの他の作品を読んでみたい」と言う方が何人かおられたので、うれしかったです。

(by S.K.)
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