読書会レポート 2015年12月

 ~イプセン『ヘッダ・ガーブレル』~

イプセンの作品は、人間の奥深くに潜むドロドロとした感情や欲望に敢えてスポットを当て、極限ともいえる状況の中で、緊張感あふれるセリフの応酬が続きます。そのため、登場人物は、端役に至るまで誰もが生き生きとしており、魅力的。とても100年以上前に書かれた作品とは思えないような新しさを感じます。

今回読書会で取り上げた「ヘッダ・ガーブレル」も、まさにそういう作品です。
発表当時は、主人公があまりも常軌を逸した行動をとることから、現実には存在しない女性を描いているとの批判を受けたほか、家庭で夫や家族を支える“教科書的女性”を書くのが当たり前だった時代に、「生身の」、ある意味規範を外れている女性を描いたことから、発表当時は世間から大きな非難を浴びた作品とも言われています。

まず、好きかどうかはともかく、主人公ヘッダをリアルな存在として感じるという意見が多く出されました。
○ ちやほやされないと生きていけない、自分の思い通りにいかないと気が済まない、こうしたタイプの女性はクラスに必ず一人は居た。
○ 世の中には、感情が不安定な女性と鈍感な男性の組み合わせのカップルは多い。そういう意味でもリアル。

主人公ヘッダに好意的な意見が多かったのは、女性の参加者が多かったためでしょうか。
○ ヘッダは魅力な女性。自分のやったことはすべて正しいと考える自信の強さや、パワーに惹きつけられるのだと思う。この女性に魅かれる男性は多いのではないか。
(実際、男性メンバーの「こういう女性に弱い・・・」という意見もありました。)
○ 美貌も地位も財産も何もかも持っているように見えて、実は何も手に入れることができなかった、可哀そうな女性。
○ ヘッダの行動は常軌を逸している部分があるが、女性が前に(社会に)出ることを許されていない時代、前に出たいと考えている女性はこうなるしかなかったのではないか。
○ 時代が違えば、ヘッダはもっと幸せになれたのではないか。

その他のストーリー展開についての意見としては、
○ ヘッダを理解していない男性(主に夫)とヘッダのやりとりは、セリフがかみ合っていなくてコメディのようで面白い。
○ 家族を捨てて家を出たテアと、行動することができないヘッダの二人の女性のコントラストが印象的。
○ ヘッダの自死は、他人に支配されるのをよしとしない彼女としては当然の結果。
○ 自殺するとは思わなかった。こういったタイプの女性は、自殺未遂はするが自殺はしないものではないか。
○ 何もかもが不満だったヘッダは、最後は充実感を持って死を迎えたのではないか。
○「人形の家」で新しい女性を描いたイプセンが、その10年後に、ヘッダ・ガーブレル(女性)を死という形でしか、満足した終わらせ方にさせたれなかったことは何とも言えない気持ちになる。
等々の意見が出ました。

現代でも、ヘッダのように何をしても幸せを感じられず、人生にもどかしさを抱えている人は多いのではないか、という意見もあり、これは私も全く同感でした。現代に至るまで人間が抱える普遍的問題についてありのままに描き出したイプセンのすごさを、あらためて感じました。
 
 今回の読書会でも、自分が思っていたのとは全く別の視点からの感想を多くお聞きすることができ、作品を違った面から捉えることができました。また、自分と同じような意見を聞くことで、作品に対する思いを参加者の皆さんと共有できたように感じました。こうしたことは、自分一人で読書している時には、まず、体験できないことです。今回も、読書会は、読書の楽しみを何倍にもすることができる場なのだなあと、とあらためて感じたところです。

(by おおたぐろ)
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