読書会レポート 2016年5月

~幸田文『流れる』~

舞台は昭和30年頃の花街、芸者置屋に住み込み女中としてやってきた梨花の目を通して描かれたいわゆる 「くろうと」の世界の物語です。

作者自身が実際に芸者置屋で働いた経験をもとに、生々しい芸者の日常を大小の事件を織り込みながら無駄のない筆致で描かれており、あっという間に物語に引き込まれてしまいます。幸田文の気丈な人柄も伺える作品だと思います。

読書会では、描写・文体に関する意見が多く出ました。

・着物の柄の描写、年嵩の芸者の姿態の描写が見事。
・女性特有の感覚で描かれている。過去の男性作家の模倣ではなく、物の見方、言葉の使い方が新しい。
・父親の幸田露伴から脱却するための気概を感じる。文章力は親譲りだと思う。
・つぼみが花開くような文章で、途中で読むのを中断するのが流れを切るようでもったいなく感じた。

文体に関しては、「とにかく読みにくかった、読了まで時間が掛かった」(多数派)と「すらすら読めた」(少数派)と意見が分かれました。私自身はすらすらと読めたので、読みにくい派が多かったのは意外でした。

登場人物については、芸者置屋のどろどろとした裏側を描いたストーリーのせいか、「関わり合いになりたくないと思う人しか登場しない」、主人公の梨花についても「見透かされるようで怖い」という意見が。確かに、鋭い観察眼の梨花は身近にいると怖いかもしれないです。

また、「芸者置屋の家に生まれたのに器量が良くない勝代の、コンプレックスで屈折してしまったところに同情する」という意見は私も同じように感じたので嬉しく思いました。

読書会に参加していつも思うことは、同じ本でも読む人の経験値や立場によって受け取り方が全然違うということです。様々な意見にはっとさせられ、好きな読書をもっと楽しものにすることができます。本の描かれた時代背景に詳しい方に教えていただくことも多いです。

今回も楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

(by 東田)
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