読書会レポート 2016年6月

~ヘルマン・ヘッセ 「春の嵐」~

 絵画を観ているような感覚を抱かせる本作品は、高校時代から大好きな作品でした。大人になり再読しましたが、今回改めてさまざまな参加者の方から作品の感想を聞くことができました。

まずこの作品が恋愛小説でありながら観念的なことを訴えようとしていることです。生活感がある描写は少なく、ヘッセの人生観をこの小説を通して書きたかったのではないかと意見が出ました。主人公の父のよって語られる「自分のためだけに生きるより、他人のために生きる方が、満足が大きい」という言葉は心に響いたという人と説教くさいという人に感想が分かれました。

次に人物について多くの感想が寄せられました。まずは主人公クーンです。クーンは「愛するゲルトルートに対して行動がとれず親友に奪われるがままになっているいじけた人間」というコメントが多く寄せられましたが、参加者の好感度は高かったです。おそらく、誰もが持つ「そうは思っても行動できない」という部分や人間の持つモラリスト的な部分をこのクーンが象徴しているからだと思います。

一方、クーンの友人ムオトは行動派でゲルトルートの気持ちを見事に自分のものにしますが、破滅的な最期をたどっていきます。男性にとってムオトは非常に魅力的で憧れるようですが、女性からはムオトが「女性を虐待する存在」であることからあまり好感が持たれませんでした。ムオトとクーンがお互い愛していながら幸せにできなかったゲルトルートの肖像をみつめがら語り合う場面は破滅的な最期の前の美しい友情のシーンです。

この2人に比べると、小説の題名ともなっているゲルトルートは「美しいという記載だけで魅力が感じられない」「人物像が立体化してこない」という意見が寄せられました。クーンとムオトの男性2人が中心の物語であり女性の描写は確かに影の薄いものになっています。

 作品全体としては33歳のヘッセが、老成したクーンを通して去りゆく青春を描いているという感想を持った方もいました。好き同士でも幸せになれなかった2人、恋愛感情を抱いた女性に友情しか返されなかった苦悩を抱えた主人公など誰もが一度は経験したことがあるエピソードを通して人生や人とのかかわりについて改めて考えるきっかけとなる作品でした。

(by N.I.)
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