読書会レポート 2016年8月

~ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』~

 読書会で推理小説を扱ってみたいと思っていました。

 しかし、推理小説というものは、犯人が見つかってしまえば終わりというパターンが多いので、なかなか読書会では扱いづらい。
「犯人が捕まった、よかったね!」と話が五分で終わってしまうとまずいので、世界中の熱狂的なファン(シャーロキアン)が何百回も読み返している「ホームズ物」にしてみました。

 ホームズはベタすぎるかなと思いましたが、原典を読んだことがない方はけっこういらっしゃったので、よかったです。(このレポートはネタバレありです)

『シャーロック・ホームズの冒険』は、初期のホームズの短編が収められたもので、どれも物語の面白さ、トリックの新しさが際立っていると思います。

 まず、ホームズの人柄について話が出ました。
「ホームズってなんかうさん臭いよね。推理も鋭いように見えて、実はけっこうハッタリ臭かったり」
「うさん臭いのがいいんだよ。探偵はうさん臭くなければならないという人もいるよ」
「ホームズはどうもハキハキした女性が好きらしいですね。女嫌いではあるけど」
「ホームズは反社会的な変人だけど、彼に黙ってついていくワトソンの忠誠心もすごい」

 その後、個々の作品について話し合いました。
 シャーロキアンが年がら年中実践しているように、ホームズ物語にはけっこうアラや矛盾があり、それに対して突っ込むのも楽しみであり、ホームズに対する愛の証でもあるのです。

「推理小説というのは人間の心理を掘り下げていないものが多いけど、ホームズ物は人間の弱さなんかがちゃんと描かれていますね」
「物語の雰囲気がいい。犯罪ものなのに、読後感が爽やかなんだよね」
「『赤髪組合』のトリックは、そこまでするか? という感じですね。コメディみたい」
「有名な『まだらの紐』、毒蛇を飼い慣らして襲わせるなんて、効率悪すぎないですか? 豹も飼っているんだから、素直に豹に襲わせればいいのに」
「蛇をミルクで飼育するという描写があるけど、いまだミルクを飲む蛇というのは発見されていないらしいですよ。つまり、この犯人は、インドの奥地から誰も知らない毒蛇を見つけてイギリスまで連れてきたということですね。凄すぎる」
「やたらと義父が娘の結婚を阻止する話が多いでしょう。もともとこの頃のイギリス文学には、結婚の話が多いんですよ。娘が結婚するとき、多額の持参金を持たせないといけなかったので、いろんな問題が発生するんです」
「『ぶな屋敷』では、ホームズが依頼人の女性にいろいろ心を砕いていますね。この辺りに彼の人間味がにじみ出ていていい」

 最後に、
「ホームズのファンは心が広い。これだけ欠点やアラの多い作品に対して怒ったりしないで、喜んで読み続けるんですから」
 という意見も出ました。
 ドイル自身、「短編小説集は、劇的な効果が得られれば、細かいことはどうでもいい」と言っています。欠点があるからこそ、読者はそれを楽しみに読むのでしょう。これが完全無欠で隙のない作品だったなら、誰も相手にしなかったかもしれません。

 ホームズの周囲をさまよいながら、さまざまな意見を交わし合うことができました。
 みなさま、ありがとうございました。

(by S.K.)
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