読書会レポート 2016年9月

~安部公房「水中都市・デンドロカカリヤ」~

東京読書会に何度か参加してきて今回初めて課題図書を選ぶことになり、その報告を書くことになりました。安部公房は高校の時に「赤い繭」を読んで好きになり、他にもそれなりの数の作品を読んできました。初期の短編を読むことが多かったのですが、特に印象に残っていたのが「闖入者」でこれが今回の短篇集に入っていたので課題図書として選んでみました。

安部公房は有名な作家だと思いますが、「変わった作品を書く人」と認識されている気がして、特に国内では誰もが読む作家ではないと思います。読書会の時にも話がありましたが、国内よりもむしろ海外で評価の高い作家で、ノーベル賞候補であったといわれているそうです。そういうわけで、参加定員が埋まるか多少心配でしたが多くの方が参加してくれてうれしく思いました。

今回の短篇集には「変身」をキーワードした複数の作品が収められており、不合理、不条理、人によっては荒唐無稽と感じるような作品が大半を占めています。

参加者の感想としては、

・純粋にストリーが面白い、文体は主語・術語がはっきりしており読みやすい、水中都市の魚に変身するシーンなどで描写が面白い、
など、肯定的な意見と、
・ストリーの展開が突飛なので、何が起こっているか分かりにくい、作中で起こる事件の意味を汲もうとする分析的な読み方をしても、結局理解できずにイライラする。

など否定的な意見が出ました。

私の印象では、小説の真意・主題なんか分からなくても良い、物語をそのままの姿で味わおうとする人は面白いと感じ、分析的に読もうとする人はあまり好評価ではなかったようです。
どちらが良いとかではないですが、人によって色々な感じ方があるのだなあと興味深く意見を聞いていました。

他にも、

・暗く悲劇的な作品が多いので、読んでいて不安な気持ちになる。
・ただ、「詩人の生涯」のように心温まる話もある。
・大人になると必然的に不条理なことにさらされるので、小説の中ではもういらない。
・前の意見に関係するかもしれないが、むしろまだ現実をそれほど知らない、不合理なことが小説中で起こっても「そんなことはありえない」と思わない、若者あるいは子供の方が楽しめるかもしれない。

といった意見がでました。

「闖入者」が印象に残ったという人も何人かいて、尼崎の事件を思い出したと述べられました。
私はその類似性は特に気づいていなかったので、実際に似たようなことが現実に起こりうるのだと恐ろしく思えました。

文学論的な話も色々と出てきて、

・安倍公房は満州で生まれて日本の社会に直接には触れずに育ったためにリアリズム的手法を取ることができず、このような一風変わった作品を生み出したのではないか。
・カフカとの類似性、
・戦後まもなくの作品が多く時代性を感じる作品が多い。彼自身が共産党に入っていたこともあってか、共産主義のプロパガンダ的に見えてしまう。

といったように様々な方向に話が広がっていました。

安倍公房が好きという参加者も3人ほどいらっしゃって、「砂の女」、「箱男」、「友達」、「カンガルーノート」、「壁」など読んだことある他の安倍公房の作品の名前が色々とあがり、参加者の皆さんの興味の広さに感心していました。

もちろん、安倍公房作品を初めて読んだという方もいて、割とそういう方ほど面白いという評価をしている気がして、今回課題図書に選んで良かったと思えました。
私も家に公房の全集があるのですが、特に後期の作品はあまり読んでいなかったので、今回の会を機会にまた手に取ってみようかと思いました。

(K.H)
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古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

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