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読書会レポート 2016年10月

 ~森鴎外『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』~


 この本は、森鴎外の後期の歴史小説が収められたものです。

 鴎外の文体は、修飾句が少なく、ストイックで圧縮された、鍛えられた刀のような、古武士のたたずまいのような文体だと思いました。
 難しい語句や漢語が多く、みなさんなかなか苦戦されたようです。

「『山椒大夫』、奴隷として売り飛ばされた厨子王と母親が、最後に再会するシーンには本気で泣きました」
「でも話ができすぎじゃない? こんなに簡単に人買いに騙されたりするのかな」
「発展途上国を旅行すると、こういう怪しい奴はいくらでも寄ってきますよ。騙されることもありえますね」
「『山椒大夫』、最後は奴隷を解放した山椒大夫も富み栄えていくということになっているけど、元の話では、山椒大夫は厨子王に復讐されるんだよね」
「なんかオチのない作品がいくつかありませんか? 一体何が言いたいんだという……」
「歴史小説だから、歴史的事実を記述するのが大切で、オチは重要じゃないんじゃないかな」
「『魚玄機』の、女の嫉妬の描写がすごい」
「『阿部一族』は壮絶ですね。出てくる武士がみんな、やたらと殉死したがるという……。本当にこの頃の武士は、みんな喜んで殉死していったのだろうか?」
「違うと思いますよ。世間体のためとか、殉死すると子孫に地位が約束されるからといった理由があったんじゃないかな」
「当時の武士社会ではこれが普通だったから、やたらと殉死に急ぐ人々も、必ずしも異常ではなかったんでしょうね」
「『山椒大夫』では安楽死の問題を扱っていますね。この辺りは、今読んでも古びたところがないのがすごい」

 私個人としては、『寒山拾得』が一番面白かったです。
 唐の時代の山奥に住む、寒山と拾得という奇妙な隠者の物語ですが、オチらしきものが見当たらず、何が言いたいのかさっぱりわからない。寒山と拾得というキャラクターも不可解で、意味がわからない。しかし、あらゆる意味を突き抜けたところに「詩」がある、と思いました。

 短い作品集ですが、取り扱っているテーマはとても多彩で深くて、話す時間がとうてい足りないほどでした。
 次回も楽しみにしています。

(by S.K.)
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