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読書会レポート 2016年11月

~ヘッセ『クヌルプ』~

最近読んで心に残ったヘッセの「クヌルプ」を皆さんがどのように感じられたかを知りたくてテーマに選びました。ヘッセ中期の代表作であり、彼の作品の中では牧歌的な雰囲気のある物語です。失恋を機に生涯放浪の旅にでたクヌルプが、人生の最後に「神」から肯定される物語です。

会の中では「自然の描写がよく描かれている」や「詩人だけあって文章が詩的で印象に残る言葉がいくつかあった」という肯定的な意見が出た一方で、
「初恋の人にふられたからといってそれだけでこんなに変わってしまうのか?」や
「最初から最後まで良い所が見つからなかった。クヌルプに成長の兆しが見えないところが好きじゃない」という否定的な意見もあり、面白かったです。
また「クヌルプは何故皆に受け入れられるのだろう?」という疑問でも様々な意見が交換されました。
その他に
「クヌルプのような人も認めないとしっぺ返しをくらう」
「クヌルプは弱くて人と深い関わりを持つことができなかった」
「サルトルは『自由の刑に処せられている』と言ったがまさにクヌルプだ」
「神はクヌルプの中の神であり、自分で自分の人生を肯定できるかどうかなのでは?」
など多くの意見が出ました。

皆さんのご意見をお聞きして色々と考えました。
クヌルプは世間から見ると仕事もせずにフラフラしているどうしようもない人間かもしれません。しかし彼は、人の悲しみや喜び、狡さ等の心の動きを察知したり、美しい自然、文化、地球を感じ取ることに人一倍敏感な人だったのではないでしょうか。
そういった感覚を研ぎ澄ました中で孤独に生きた人だったのではないかと思います。
その感覚を失いたくなかったために、仕事につくこともなく、一つの場所に留まることも出来なかったのではないかと感じました。

読書会で様々な本を読むようになり、これまで自分が手にとることがなかったような本を読み、深く感動することが増えました。「クヌルプ」もその中の一つです。
それは読書会での皆さんの様々な読み方を伺ううちに刺激され、これまでとは違った角度や深さで本を読むことができるようになったからではないかと思っています。
また、読んだ感想を自分の中だけで抱えるのでなく、皆さんにお話しすることで自分のなかに新たな気づきが生まれることも多いです。
読書会に参加しなかったらヘッセにも「クヌルプ」にも出会えなかっただろうと思います。
とても楽しい時間となりました。ありがとうございました。
(by mio)
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