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読書会レポート 2016年12月

~フィツジェラルド『フィツジェラルド短編集』~

最近、短編集を読むのにはまっておりまして、今回読書会の本を選ばせていただけるということで、『フィツジェラルド短編集』を提案しました。『氷の宮殿』、『冬の夢』『金持ちの御曹司』『乗り継ぎのための三時間』『泳ぐ人たち』『バビロン再訪』という、6つの短編集が収められている本です。

村上春樹さん一押しの作家で、翻訳もされているということで、村上春樹ファンの方で、「村上春樹さんも翻訳しているフィツジェラルドの本が読めて嬉しい」という声が聞かれました。私の個人的な意見ですが、この短編集を読んでみると、初期の村上作品というのは、フィツジェラルドの小説にとても影響を受けているなと感じます。

フィツジェラルドの短編は「情景描写が上手い」という評価が多かったです。「読んでいると、1920年代の華やかさが映像として浮かんでくる」「『氷の宮殿』の楽隊のシーンは、音が聞こえてくるようだった」という意見がありました。ちなみに『氷の宮殿』は結婚して南部から東部に行く女性の話なのですが、「彼女の気持ちは、地方から上京したときの自分の不安だった気持ちと重なった」という声があり、遠く海を越えた場所からでも共感を呼び起こしてしまうフィツジェラルドって、すごいなと思いました。

『冬の夢』は、主人公がどうしようもなく愛してしまう、魔性の女のジュディ・ジョーンズについて「こういう女性は好きか、嫌いか」で議論が盛り上がりました。女性も男性も、「嫌いだ」という意見が大多数でしたが、一方で「本当は好きだけど、この場では言えないだけじゃないかな」という鋭い指摘もありました。

『バビロン再訪』は、「話が進んでいくにつれて少しずつ事情が明らかになる構成が良い」という意見がありました。羽目を外して家庭を失ってしまった主人公が、最後に子供を引き取ろうとするところで話は終わるのですが、「次世代に自分を託す前向きな気持ちが表れている」という意見があり、そうだとすればこの小説を、短編集の最後にもってくるのは上手い構成だなと思いました。

本書は野崎 孝さんの訳なのですが、「この人の翻訳だから良かった」「この人の翻訳はわかりにくい」という風に、評価が真っ二つに分かれたのは興味深かったです。

基本、読書って独りで読んで、完結するものなのですが、こうやって読書会で感想を持ち寄って意見交換すると、考えつきもしなかった視点に接することができて、毎回楽しいです。ありがとうございました。

(by k)
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