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読書会レポート 2017年3月

~エンデ『モモ』~

 モモという不思議な少女が、人間から時間を盗んで搾取する「時間どろぼう」と戦い、最後には打ち勝ち、世界に平和と笑顔を取り戻す――という物語です。
 時間とは何か、時間は人間にとってどういう意味があるのか、といった問いを投げかけています。

 もともと児童向きの小説でもあるため、子供の頃に読んだという人も何人かいました。しかし、読後感はその頃とはまったく違う、とのことでした。

「子供の頃って、時間はただ流れゆくものでした。大人になったら、時間は『持っている』という感覚になる。だから、時間どろぼうは許せませんね」
「勧善懲悪の物語ですよね。時間どろぼうがひたすら悪者になっているという。このほうが子供にはわかりやすいのかな。時間どろぼうにも妻子がいて、住宅ローンを払ったりしているでしょうに……」
「モモは不思議な能力を持ってますよね。ただそこにいるだけで、人は何かを喋ってしまい、素晴らしいアイデアが湧いてくるという。いったいどういう存在なんだろう」
「心理学で言う『傾聴』のテクニックじゃないかな。ひたすら聴くことで、相手の言葉を導き出すという」
「モモがいると素晴らしいアイデアが湧いてくるというのは、モモがミューズ的な存在ということなのかもしれませんね」
「亀の甲羅に文字が浮かび上がるのは、どういう仕組みなんだろう。液晶パネルとか、LEDが組み込まれているとか……」
「すごく映像的な作品ですよね」
「そう。星の振り子が揺れるたびに、時間の花が次々と開かれ、世界が色彩を帯びた音楽に満たされるという描写は、すごく映画的。まるで初めから映画になることを想定していたみたい。スペクタクルな美しさなんですよね」

 私としては、時間を奪われた大人たちが、モモにいろいろせわしく突っ込むところが、深刻かつ面白かったです。これはきっとエンデも楽しんで書いたに違いありません。

(by Das Wandern)
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