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第九回 読書会レポート

4月8日、桜の花が満開を迎えた春の一日。

神保町の古民家カフェ「喫茶去」にて読書会が開催されました。
今回の課題はカミュの「異邦人」。
カミュはこの作品によってノーベル賞を受賞したと言っても過言ではない、
あまりにも有名な作品です。

主人公ムルソーは、友達と女のもめごとから来る諍いに巻き込まれ、これといった理由もなく殺人を犯します。
その裁判で彼は情状酌量の余地はないとして死刑が確定してしまいます。

つまり、

母親の葬式で涙を流さなかった。
母親の葬式でミルクコーヒーを飲み煙草を吸った。
母親の葬式の翌日、女友達と海水浴へ行き、喜劇映画を見て笑い、寝た。
殺害した相手に1発のみならず、さらに4発撃った。
これらが不利に働いた結果なのです。

ムルソーは嘘をつくことを拒否した生き方をし、関心のないものに関心があるふりをしたり、ものごとを自分が感じる以上に演じたり、自分を守るために計算した言動を取ることを拒絶しました。

「その徹底した姿勢に共感を覚えられるところがなかったために受け入れるのがむずかしかった」という人と
「いや、かなり共感するところがあった」という人がいました。

「異邦人」というタイトルはムルソー自身がアルジェリアという国でフランス人であったという意味での異邦人、さらにその生き方ゆえ社会から浮き上がっているという意味での異邦人、の二重の意味合いがあります。

なにごとにも無関心、暗黙のルールがわからない、などの理由から、ムルソーはいわゆる病気(発達障害)だったのではないか。との意見。

アメリカなら「犯罪を起こす人はまず病気」という考え方があるし、いまなら精神鑑定がなされるはずでは?

あまりに簡単に死刑が決まり実行されている気がする。これも時代のせいだろうか。

そもそも「異邦人」は不条理小説といわれるが、これはこの小説の書かれた時代の不条理であって、いまならほとんどの不条理は解決されるんじゃないか。

いや、不完全な人間社会が続く限り、不条理は存在し続けるのでは?

ムルソーは今まで生きてきて後悔というものをしたことがないという。これは幸福なことだと思う。

独房を訪れた司祭が「罪人はいつか神の顔を思い浮かべるはず」と決めつけてもムルソーは賛同しない。
思い浮かべたのは神ではなく女友達マリイだと言ったところが「とても人間的で良かった」との意見多数。

脱線して、

泣くことについて。

悲しくても泣くとは限りません。

逆に悲しくなくても泣くことがあります。

たとえば、卒業式で泣く人は自然に感極まって泣いている人だけではない。
案外「泣く方がかわいいから泣いとけ」という人も女子の半分くらいいるのではないか。
また、人につられて泣く人もいるに違いない。

など、興味深い話が縦横無尽に枝葉を伸ばして語られました。

知的な好奇心が満たされまくった、充実の二時間でした。

参加された皆様、ありがとうございました。

次の開催は5月13日。夏目漱石の「それから」だそうですよ。

(リリカルリリーさんによるレポートです)
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東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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