読書会レポート 2018年4月

~川端康成『みずうみ』~

銀平( 34 )の目を奪う少女達は若く、戦後期には似つかわしくない清純無垢な存在です。その純粋さ、美への憧憬にうながされ、銀平は職を追われようが、少女が彼氏と一緒であろうが、無意識に少女の後をつけてしまいます。そのついてゆくさまは、少女に没入し自己を喪失しており、一人の人間とは数えられないほどです。


初読の印象はさまざまでした。ストーカーや変態小説といったラベリング、銀平の奇怪で一方的な言動に対する嫌悪感、盛り上がりに欠ける展開、唐突な終幕への指摘や、現実と記憶を行きかう独特な場面転換などなど。
銀平は少女のもつ魔力が自分に追う行為を強いており、少女もその魔力を自覚しその愉悦に浸っていると考えています。この観点には、犯罪を為す人特有の考え方であると顰蹙が上がりました(笑)その一方、追われるスリルを味わいたいといったマゾヒズムをもつ女性は、追われたいと感じているのではないかという意見も出ました。
銀平の一方的なコミュニケーションに辟易しつつも、「お楽しみですな。」の場面にあらわれる素直さ、コミカルな面には好感が持たれ、男性読者からはいいやつそう、友だちになりたいという声が上がりました。

また、元教え子の久子( 16 )、初恋のやよい( 14 、 5 )との関係性には、純愛と呼べる情緒的な交流があるのではないかという議論になりました。学校を追われた後、久子と逢引する場面では、久子は「先生、また私の後をつけて来て下さい。」と自ら言います。“後をつける”といういち方向的な行動を久子は受け入れ、銀平は望まれるまでになりました。
銀平は対人関係が上手なほうではないし、臆病で非道な行動もしてしまいます。けれども、少女のもつ美をひたむきに愛する気持ち、その美と共に生きてゆきたいという子どもの頃からの願いを持ち続け、諦めることなく人と関わろうとします。
「幼い銀平の幸福はやよいと二人づれの姿をみずうみにうつして、岸の 路 ( みち ) を歩くことだった。みずうみを見ながら歩いていると、水にうつる二人の姿は永遠に 離れ ないでどこまでも行くように思われた。」

 銀平の備える純粋さを好みつつも、極端な対人関係をもつこの人物について多様な価値観をお持ちのみなさんと考えを交わすことができ、また新たな『みずうみ』像を得ることができました。

(by K.O.)
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