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読書会レポート 2018年6月

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~モーム『雨・赤毛』~    

今月の課題はサマセット・モームの「雨・赤毛」でした。
南国を舞台にした三作品「雨」「赤毛」「ホノルル」を収めた短篇集です。

南の島に足止めされた宣教師は同宿のいかがわしい若い女を改心させるべく情熱を注ぐが、降り続く雨のせいもあってか、事態は思わぬ方向へと導かれていく。
表題作の「雨」は、世界の短篇小説史上の傑作と言われるだけあって、参加された皆さんの一番良かった作品として「赤毛」をおさえて一位に輝きました。

・湿気が感じられる。
・構成が素晴らしい。
・「雨が降っていたからしょうがないかな」とまで思わせるモームの話術が巧み。
・「雨」が一番、読んでいて気持ちがモヤモヤさせられて面白かった。

と絶賛するかたが多かったのはもちろん、

・宣教師のようにまじめな人ほど抑圧されていることが多い。
・この宣教師は厳し過ぎる、矛盾も抱えている。
・この宣教師のような上司がいた。
・女が改心しそうになったのは演技、ふりをしていただけだと思う。なので、宣教師の死に女が間接的に影響した。
・でも私はこの女がわりと好き。少なくとも他の女性二人より魅力的。
・実は宣教師の死は自殺ではなく、他殺だったのでは?
・犯人は夫の死にあまりに冷静だった奥さん、あるいは女?

など、とんでもない意見まで飛び出して笑いが起きました。

その一方、

・「雨」も「赤毛」も後味が悪い。
・「赤毛」は南の島で大恋愛を繰り広げた美しい男女が、長い年月の後、お互いに会っても気づきもしないという現実が皮肉で厳し過ぎる。
・「雨」はわざとらしくて劇的すぎる。
・どの作品もきっちりオチをつけているのが「読ませられている感」があり、個人的にあまり好きではなかった。
・そもそもオチをつける必要があったのか。
・いや、モームはオチのない作品をバカにしていたので、それが彼のスタイルなのだろう。
・傑作と呼ばれるほどの文体の素晴らしさは感じられなかった。訳者のせいか。

などといった意見も聞かれました。

今月もひとつの作品でこんなに様々な感想や意見が聞けて面白かったです。
いつもながら、ひとりで読むだけでは及びもつかない読書の醍醐味を味わうことができた読書会でした。

(by M.O)  

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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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