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読書会レポート 2018年7月

 ~ドストエフスキー『地下室の手記』~

莫大な遺産を手に入れた主人公の「僕」は、社会との関係を一切絶ち地下室にひきこもる。
その生活の中で思いめぐらしている事を手記へ書く。第一部では彼の思考、第二部では
ぼた雪にちなんだ彼の過去について語られる。

 ・「僕」の過去話であり、第一部とは違う、物語形式の第二部の方が読みやすかった。
 ・哲学に興味がある、学んだことがある人は、僕の独白が展開されている第一部は読みやすいかも。
と、作品全体での読みやすさについて意見が出ました。

第二部は僕がひきこもる前、社会と繋がりを持っていた時の話。意外と「僕」の考えや行動に
共通点や共感できる部分を持っている方が多かったです。

 ・「僕」は癇癪を起して感情を爆発させやすい。
 ・癇癪持ちだが、将校と肩をぶつけるために筋道を立てて行動を起こし実行するところを見ると、論理的に考えられている。実は頭が良いのかも。
 ・考えの方向が反転していくため、客観的に読んでいるとコメディチックで面白い。
 突っ込みどころがある。
 ・読者の方が、読んでいていたたまれない、恥ずかしい・・・と感じる場面が多々出てくる。
 ・読了後の心に重いものが乗りかかってきた。夜に読み終えると特にそう感じた。
 ・最後まで希望が見えなかった・・・。
 ・「僕」を訪ねてきた「リーザ」に金銭を渡して追い出したのに、追いかける場面。あそこがせめてもの救い。

 第二部後半で登場する「リーザ」と「僕」のやり取りは印象的。その二人が結ばれない、
希望や救いのない終わり方が作品にリアリティを与えていると感じました。
現実って、物語のようにハッピーエンドばかりじゃあないよね、と。
女性との関係に敢えて”逃げ道”を作る部分や女性の描写に、作者が男性であることを意識させられました。
 人は他人と関わっていくことで人格が形成されていく事を再認識させてもらいました。
ひきこもっている「僕」の言動は人格破たん者そのもの。この言動に”ひきこもる”ことへの怖さが
伝わってくるため、読んでいて息苦しさを感じます。こうなってはいけないよなと考えさせられました。

 読書会の2時間、意見が絶えずあっという間に過ぎました。多くの意見が出たため、それを頭に入れつつ
再読してみようかと思います。

第一部の話題は、≪すべての美にして崇高なるもの≫や2に2が4は当たり前ではないこと、歯痛にも快楽を見いだせる、などなど。
私だけではなくほかの方も、見開き2ページ改行なしで続くこの手記の内容を読むのはつらいものがあったのだと思いました。
このことを踏まえ、再読するときは物語形式の読みやすい第二部から読んでみようと思います。
時系列的にも第二部の方が前ですので。第一部で挫折された方に出会ったときは、この順序で読むことを勧めていきたいなと思います。

(by M.N)
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