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読書会レポート 2018年8月

~宮沢賢治『銀河鉄道の夜』~

有名な作品だけに、複数の出版社から文庫本が出ているが、今回は角川文庫版。「銀河鉄道の夜」に出てくる双子のお星さまのお宮や蠍の火といったエピソードが、別な短編としてまとめられており、賢治の世界観をさまざまな角度から鑑賞できる短編集となっている。
しかし、子供向けの童話にしては、やや「難解だった」というコメントが多かった。そして、「機械伯爵が出てこなかった」などと、何か勘違いしたコメントも。

銀河鉄道には終着駅がない。「じっさい、どこまででも行きますぜ」と、登場人物に語らせるが、「この傾斜があるもんですから汽車は決して向うからこっちへは来ないんです」との説明から、片道運転であること、つまり、天国行きの鉄道であることが暗示されている。ジョバンニは生きた体のまま三次空間のほうから持参した切符を手に誤って乗り込んでしまったが、不完全な幻想第四次の銀河鉄道の乗客は、おそらく皆、死者なのだろう。実際、同乗していたはずのカムパネルラは、物語の最後で川へ落ちて死んでいたらしいことが明かされる。だとすると銀河鉄道とは、草原で昼寝をしていたジョバンニの夢枕にカムパネルラが現れた夢物語として読むことができる。

 それにしても、カムパネルラの父の冷淡な態度が気に懸る。「もう駄目です。落ちてから45分たちましたから」と、自分の息子が川に落ちたにしては、やけに冷静だ。これが推理小説ならば、カムパネルラを殺したのは、冷静さを崩さない父ということになるだろう。謎が謎を呼ぶ展開だが、この未完の作品には、本当はもっと続きがあったのかもしれない。

 ところで、ジョバンニは活版所にアルバイトに行くと、「よう、虫めがね君」などとからかわれ、涙を拭いながら仕事に就くという、まるで「ドラえもん」の、のび太のようないじめられっ子だ。

同じ短編集にある「よだかの星」で、よだかが被るいじめも、ジョバンニに対するいじめと酷似している。よだかは鷹からムチャクチャ理不尽な要求を受ける。曰く、「よだか」という名は、いわば「おれ(鷹)と夜と、両方から貸りてあるんだ。さあ返せ」、と。そして、明後日の朝までに「よだか」を改名して、「市蔵」と名乗れという。

なぜ鳥の名を人間の名前に変えなくてはならないのか。まるでジャイアンがのび太に対して要求するようなセリフではないか。逃げ場を失ったよだかはとうとう空に逃げて、やがて体から燐の火のような青い火を放ち、最後には星になってしまう。賢治のいじめられっ子に対する眼差しの優しさに心を撃たれた。

(by JUNJIRO FUJII)
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