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読書会レポート 2018年11月

 ~カポーティ『遠い声 遠い部屋』~

カポーティの処女作である今回の課題本は、母親が亡くなり、未だ見ぬ父からの手紙を頼りに、人里離れた屋敷スカリイズ・ランディングに住むことになった主人公ジョエルの物語。20世紀半ばの南アメリカを舞台に幻想的な雰囲気で描かれています。

以前読んだ際には、ファンタジックな空気感と時に打算的で残酷な子どもたちが魅力的だったことを思い出しつつ、推薦しました。

今回最も話題になったのが、主人公ジョエルの年齢、そして「大人になること」について。

13歳にとってこの環境は過酷なのか、かわいそうなのか。ジョエルは無理に大人にならされてしまったのではないか。それは不幸なことなのではないか。しなくても良い経験もあるのではないか。

13歳という微妙な年齢をどうとらえるか、時代でも個人でも変わる中、そこには色々な興味深い視点がありました。

男性からは、僕から俺に変わる思春期の一人称問題、母をどう呼ぶかのおふくろ呼称問題。女性は年齢を経ても変えることが少ないので、男性との違いは何なんでしょうね。

個人的に印象に残ったのは、成長の目安となる3段階にこんな考え方をしているという意見。①サンタはいないことを知る、②自分はコウノトリに運ばれてきたわけではない、③親は神様じゃないと悟る。

早々に3段階めまで経験してしまったジョエルは、すぐにでもスカリイズ・ランディングを旅立ってしまうのではないか、この点も意見が分かれるところでした。

直接的な比喩も多い一方、謎の女性や元ホテルへの一泊旅行など、答えを明記しない出来事や表現も多い作品でした。みんなで読み直すことで、見落としたストーリー展開に気づくきっかけにもなったと思います。
(by マミ)
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古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
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