
読書会レポート 2019年1月


~シェイクスピア『ロミオ&ジュリエット』~
バレエにもなりシェイクスピアの中でも抜群の人気を誇る作品です。敵同士の男女の悲劇は、いつの時代でも感銘を与えていますが、きちんと本作品を読んだ人は意外にも少ないのかもしれません。今回の読書会でも、初めて読んだ方ばかりでした。
昨年末には宮藤官九郎も手掛けた本作品、この機会にきちんと読んで皆様と感想を話し合い、理解を深めていきたいと思い選定しました。
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作品全体の感想としては、
・元々が戯曲であるため、読むよりも演劇やドラマ、映画化されたもののほうが楽しめそう
・訳本がそれぞれとても違う。ある訳はべらんめえ調で、お経を唱えるシーンもあり、かなりの意訳がみられる。
・下ネタが多く、極悪人はいないが人間臭い人物ばかり。それが男女二人の純愛がきわだたせる要素となっている。当時の観客は高尚さよりも猥雑さを好んだのだろう。
・わずか5日間ですべてが完結する展開の速さ。このワクワク、どきどき感がとても良い。
・短い間に、恋の炎がぱっと盛り上がり、何人もが死んでしまう。恋愛とバイオレンスの盛り方が見事。
・言葉の魔術師の名作だけあり、比喩表現や対比する言葉の組み合わせがセリフに練りこまれていて、読んでいてため息がでる。
・有名なバルコニーのシーン、さすがの見事さ。詩的であり恋の苦しさや悲劇の予感がこめられている。初恋の人を思い浮かべて音読してしまった。
息もつかせずにあれよあれよと進む展開の速さとロミオとジュリエットを取り巻く人間臭い人物たち。詩的なセリフと作品の魅力について語りました。
また、登場人物については、
・母親から大嫌いなパリスとの結婚を勧められたジュリット。それがあったからロミオとの恋に走ろうとした感じもする。
・両親ともジュリエットの考えを尊重しようとしない。当時の普通だろうが可哀想。
・パリスは最後までジュリエットを想い、自分も好かれていると勘違いしてロミオに殺される。案外幸せかも。
・ロミオはロザラインが好きだったが、一瞬でジュリエットを好きになる。浮気者のようだが、恋というのはそういうものだろう。
・ロレンス神父は、二人の恋愛が両家の諍いがおさまるきっかけになるのではと思っているが、そのわりに不手際が目立つ。何だかうさんくさい。
・ロレンス神父が語り部のように最後に事の顛末を解説している。
・48時間、仮死状態となる薬っていったい何だ。
・ロミオはストーカーのよう。暗い人物にも見える。無駄に剣が強い。
・乳母は、最初はロミオを手引きしたりするが、結局パリスをすすめるなど変わり身が早い。「人間」の代表のような人物。
・この物語の舞台はイタリア。イギリスからみたイタリア人の直情的で情熱的な在り方を描いたように思える。
・実際にジュリエットのような少女がいたら困る。ひたむきというよりは、お先走り。未熟。最後はロレンスの静止もきかず死んでしまう。そのあげく両家が和解して銅像を建てるとか、よくわからない。
・この二人、死なずに結婚したとしても将来的にうまくいく感じはしない。
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意外にもロレンス神父に批判的は意見が多く、またこのような若さの暴走に振りまわされるのは迷惑、といった現実的な意見もありました。
純愛だけではなく人間の愚かさや醜さとこれからも生きていく現実をしっかり描いたこの作品は、これからも映画化されて、舞台化されて世界中を魅了しつづけることでしょう。
(by 麗)
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