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読書会レポート 2020年9月

~オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』~

このような世界は、ありか、なしか?
という問いかけに、参加者の答えはさまざまでした。

工場のベルトコンベヤーにのった試験管でつくられる人間に、
嫌悪感をおぼえたという人。
効率よく国家に管理されている社会はすごく気持ち悪いと思った人。
この小説を読むまで良いことだと思っていた「安定」というものに
疑問をもつようになった人。
自分とは、仕事とは、生きるとは…といろいろ悩みたいタイプの人間には、
この世界は生きづらいだろうなと感じた人。
読み終えた後、なにかまだ泥沼につかっているような、
消化できない後味の悪さを感じた人。

こうした感想をもつ参加者がいた一方で、

ディストピアっていうけど、けっこう良い世界なのではと思った人。
戦争もないし、生まれたときから階級が決まってて、
自分に疑問を持たずにすむし、ソーマという薬を飲めば落ち込むこともない。
こんな世界で暮らしてみたいという人。
「すばらしい新世界」で非道徳的だと否定されている「家族」「父」「母」
という概念を、そもそも持ち合わせていない民族も現存するし、
いまだに一夫多妻の国だって多く存在する。
そう考えると、「すばらしい新世界」が特別というわけでもないという人。

参加者の感想はじつにさまざまで、このような多様な見方ができるのも、
この小説の魅力のひとつかもしれないと思いました。

読書会の後は、オンライン飲み会に参加。
みなさんと楽しいお酒を飲みながら、はっと気づきました。
そういえば、「すばらしい新世界」のなかで異端の存在だったバーナードは、
誕生の過程で試験管で受精する際に、誤ってアルコールを注入されたために、
欠陥品の人間になったと噂されていたのでした。
オンライン飲み会で、いま、まさにみんなで進んでアルコールを
摂取しているなと思ったら、少し笑ってしまいました。

(by YK)
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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

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