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読書会レポート 2020年11月

~ドストエフスキー『白夜』~

「感傷的ロマン」と副題が添えられたこの作品、やたらと長いドストエフスキーのほかの作品と違い、短くて読みやすいかなと思って、読書会のために選んで見ました。

 この小さな小説を巡って話されたことは、次のようなことでした。

「最後に主人公は失恋して終わるんだけど、全体の調子は陽気で明るいですね」
 →そうかな? 陽気にしていないと死にそうだからそうしているだけで、本当は相当堪えていると思うよ。

「ヒロインのナースシェンカ、純情そうだけど、本当はかなりの悪女では?」
 →そう思う。主人公を利用するだけ利用しているしね。主人公を振っておきながら、最後に「今もあなたを愛しています」なんて手紙を送り付けること自体、相当な性悪女のやることでしょう。
 →まだ17歳だし、お婆さんにピン止めされるほど自由のない生活を送っていたのだから、ある程度は仕方ないでしょう。かわいそう。

「この主人公の男、結局利用されるだけの『都合のいい男』なんだよね」
→そうだね。好きな女と別の男の仲を取り持って、二人が結ばれたら即座に捨てられてしまう。『男はつらいよ』や『トラック野郎』みたいだな。
→ヨーロッパの騎士道精神の表れでは? 愛する女性のために、命を投げ出しても尽くすという。

「主人公が一人で延々としゃべり続けていますよね。ドストエフスキーのほかの作品もこんな感じなの?」
→そう。『カラマーゾフの兄弟』なんて、最後に弁護士が一人で20ページくらいしゃべり続けるし。この執念深い文体がドストエフスキーの真骨頂。

・「この小説、どういうわけかインドで五回も映画化されてるんですよね。何がインド人のハートを射抜いたんだろう?」
→わからない。どう考えても、インドで白夜は起こらないしね。なぜ受けたのかよくわからないところが、いわゆるインドの神秘じゃないの。


短い小説なので、話すことはあまりないのではとも思っていましたが、意外にも時間を割り込みかねないほどの話題に詰まった本でした。

(Das Wandern)
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