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読書会レポート 2021年5月

~オースター『ガラスの街』~

「アメリカの現代作家ポール・オースターの出世作ですよね。オースターは前にこの会に来てくれていた人が好きだと言っていたので、選んでみました」

「主人公クインのところに、『探偵のポール・オースターさんですか』という間違い電話がかかってくる。クインはオースターに成りすまし、依頼通りにピーター・スティルスマンという男の後をつけるが……という話ですね」
「いきなりポール・オースターという作者と同名の人が出てきて、意表を突かれました。斬新だよね」

「これは一見、探偵小説に見えるけど、謎はまったく解明されない。それどころか、そもそも謎が存在したのかすら、明らかではないんですよね」
「この作品は発表されたとき、探偵小説の出来損ないだと思われたらしい。そして作者は17の出版社から出版を断られているんだよね」

「結局、事件は本当にあったのか。すべてクインの妄想だとも考えられるよね。この小説には登場人物は一人しかいない。それはクインで、ほかの登場人物はすべてクインの分身なんじゃないの」
「文体が音楽的で、まさにガラス細工の精巧な寄せ集めのように感じました」

「物語はスリリングなんだけど、結局、この話の落ちも、何を言いたいのかもよくわからなかったな」
「いわゆるメタフィクションを超えた、メタメタフィクションという感じなのかな。最初に作者と同じ名前の人物が出てくることによって、この小説は作りものですよと宣言しているんだよね」
「読者は翻弄され、オースターにニューヨークの街を連れまわされ、一人置いてけぼりにされ、途方に暮れるような作品ですね。でも、人間は迷うことや戸惑うことに喜びを見出すこともある。これはそんなパラドックスを表現した作品じゃないかな」

(by Der Wanderer)
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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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