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読書会レポート 2021年9月

~シュリンク『朗読者』~

 十五歳の少年ミヒャエルは、ある時母親ほど年上の女性ハンナと出会い、恋に落ちる。しかし、ある時ハンナは失踪し、次に少年がハンナを見たのは、法廷の中だった。彼女は、ナチスの戦犯として裁かれようとしていたのだ――という小説です。

 会では、次のようなことが話されました。

・色々な読み方ができますね。はじめは少年と大人の女性との危うい恋愛物語として、そして中盤以降では、戦争犯罪をどう裁くのか、という深刻な問題。

・裁判で、ハンナは自分が字が読めないことを隠すために、強制収容所での罪を認めてしまいますね。なぜこんなことをしたのだろう。
 →文字が読めないということはものすごいコンプレックスにもなり、重荷ににもなるんです。罪と引き換えにでも隠しておきたいほど、本人には辛いことだったんでしょう。

・なぜ、ミヒャエルは刑務所に入ったハンナに、本を朗読したテープを送り続けたのだろう。
 →やはりまだハンナに愛情があり、つながりを持ちたかったのでは?

・最後に、ハンナは獄中で自殺してしまいますよね。これはなぜなんだろう。
 →収容所での罪を重荷に感じていたのでは?
 →その前にミヒャエルがハンナに面会に行きますが、ミヒャエルはどこか冷ややかに接しますよね。それがショックだったのでは?

 結局、本当にハンナは罪を犯したのか、収容所で何が起こったのか、なぜハンナは自殺をしたのかは不明なままです。
 作者もあえてそのあたりをぼかして書いています。いろいろな解釈ができるからこそ、この小説は世界中で読まれているのだろうなと思いました。

(by Der Wanderer)
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古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
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