fc2ブログ

読書会レポート 2021年10月

~スティーヴンソン『宝島』~

 少年ジムが、海賊が残した地図を頼りに、島へ宝を探しに行く冒険物語。
 有名な小説ですが、子供向きに書き直された物が多く流布しているので、原作を読んだ人は意外に少ないのではないでしょうか。

 なお、私たちは「海賊」と言うと、すぐさま手や脚が一本以上なく、おしゃべりなオウムを飼い、骸骨の旗を船に翻して航行する荒くれ男を想像しますが、そのステレオタイプな肖像は、この作品に出てくるシルヴァーという人物から生まれたもののようです。

 シルヴァーはこの作品のキーパーソンなのですが、「そんなに魅力的な人物だろうか」という疑問の声も上がりました。片脚のない海賊で、とても頭がよく絵になる男なのですが、とにかく卑劣で、平気で味方を裏切り、裏切った後にまた味方につけようとする、厚顔無恥なところがあるからです。

 この作品のテーマは、「友情と裏切り」だと思いました。
 登場人物の多くは、互いを信じておらず、平気で裏切りを犯す。ただ、「宝を掘り当てて無事に国に帰る」という唯一の目的のもとに、互いに手を握り、手を握りながらも裏切り続けるからです。
 そういう意味では、甘い感傷のないハードボイルドな世界だと思いました。

(by The russian roulette )
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


メールはこちら

Facebookページ

Twitter

主催者・杉岡幸徳のウェブサイト

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR