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読書会レポート 2022年2月

~ゴールズワージー『林檎の樹』~

 この小説では、学生のアシャーストが田舎娘のミーガンと出会い、恋に落ちます。
二人は林檎の樹の下で結婚の約束をしますが、準備を整えるために一人街に出かけたアシャーストは、そこでステラという少女と出会い、ふたたび恋に落ちてしまいます。
結局、アシャーストはミーガンを捨ててステラを選んでしまう……という悲恋の物語です。

会では、こんなことが話し合われました。

「だいたい、旅に出かけて、見知らぬ一般人の家に泊めてもらうなんてことはあるんだろうか?」
「ありますよ。僕にも経験があるし、似たような話はよく聞きます。特にイスラム圏では旅人は親切にされ、歓迎されますよね」

「アシャーストは本当にひどい男……」
「そうだね。しかし現実を見据えた、どこにでもいる普通の男とも言える。ミーガンとアシャーストはどうせうまく行かなかったのでは?」
「アシャーストはひどい俗物として描かれてますね」
「ひどい男かもしれないけど、だからこそ小説になったんだと思う。これがハッピーエンドになっていたら、ドラマにはならないよね」

「ミーガンはなぜ最後に自殺したんだろう?」
「いや、作者は自殺したとは書いていないのでは? 『恍惚の表情で小川に浮かんでいるのを発見された』と、自殺とも事故ともどちらとも取れる書き方をしてるね」
「たぶん、作者はあえてあいまいな書き方をしたんだろう。読み方によっては、ミーガンは必ずしも悲惨ではなく、喜びの中で幻影を見ながら息絶えたとも取れるんだよね」

ストーリーは単純かつ悲劇的なのですが、いたるところに麗しいレトリックが、林檎の花のように咲きほこっている小説だと思いました。

(by Der Wanderer)
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古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
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