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第13回 読書会レポート

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8/5(日)、第13回目の読書会が開かれました。
参加者は14名。直前に『FRaU』で取り上げられたせいか、史上最多でした。

テーマは有島武郎の『生まれ出づる悩み』。
溢れる才能を抱きながらも、貧しさゆえにまともに絵筆も取れず、北海で漁業に勤しむ画家・木本。彼に対して作家・有島が原稿用紙の上から熱く語りかける、というスタイルを取っています。
「芸術を取るか、生活を取るか」という究極の選択を、読者に突き付けます。

会ではこんなことが話されました。
「読んで素直に感動しました」
「そんなに名作かな? 作者の想いを、勝手に画家に投影しているだけでは?」
「この作品は当時の毎日新聞に連載されていて、読者はみんな泣いたというんですよ」
「でも、登場人物の男二人は、泣きすぎじゃないか。暇さえあれば泣いている。どこかにナルシズムがあるのでは?」
「昔の日本人はよく泣いたんですよ。でも、文字を覚え、本を読み始めてから泣かなくなったと柳田國男は言っています」
「作者と画家の関係が怪しくない? 単なる友情や共感を超えたものを感じる。ひょっとしたらこれは『ボーイズラブ小説』では?」
「プロットは単純だと思う。でも、描写は繊細で評価できる」
「このころの作家は、やたらと悩みすぎだと思う。時代的なものだろうか。作者は人妻と心中しているし」
「『鬱勃たる青春』という言葉があるように、昔は必ずしも『鬱』は悪いことではなかった。真面目に生きているとどこかで悩むのは当然じゃないか」

最後に、「芸術(仕事、好きなこと)を取るか、生活を取るか」という問いを参加者の皆さんにも投げかけてみました。
結果は、芸術が5人、生活4人、その他……というものでした。僕としては、意外に芸術が多いという印象を受けました。
「芸術を取るか、生活を取るかを悩む時点で、真の芸術家ではない。本物の芸術家なら、何も考えず、気が付いたら芸術の道を歩み始めているものだ」という意見が心に残りました。
実際、木本のモデルになった木田金次郎は、有島の死後、漁業を捨て、芸術に専念する道を選びます。

とても真面目な作品ですが、会ではリラックスしながら、自由な意見交換ができたと思います。

次回は9/2(日)、テーマはツルゲーネフの『はつ恋』です。
(by 杉岡幸徳)







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東京読書会

Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
肩の力を抜いて、真面目な話でなくてかまいません。

まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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