第15回 読書会レポート

10月14日(日) 「変身」 フランツ・カフカ 

 役人であり作家であるカフカは、父親の強大な支配の下「変身」を完成させた。

「ある朝目覚めたグレゴール・ザムザは、自分が一匹のばかでかい毒虫に変わっているこ
とに気がついた」という書出しで始まるこの作品には、登場人物の中に巨大な毒虫を見て
も驚かない人々が存在する。カフカにとって「毒虫に変身」することは恐らくどうでも良
いことであり、「ある日突然別のものに変わってしまった」ということ、また変身してしまった者を取り巻く周囲の変化を伝えたかったのかもしれない。

 突然、肉体的・精神的に別の存在(例:肉体の欠損、精神疾患など)に変わったことに
よって、保護すべき立場である親は子を拒絶し、「母親としての時間の停止」による思考低下が、苦しむ息子に何もしない状況を生む。他方、「役立たずの娘」という存在の妹が献身的にグレゴールの世話をすることで、彼女は己のアイデンティティを確立する。グレゴールはその間、人間的な思考を持ち、家族とコミュニケーションを取ろうと努力をするが、その気づかいや頑張り具合は相手に上手く伝わらず、空回りしていることに気がついていない。その状況はグレゴールが人間であろうと毒虫であろうと変わりはない。そんなグレゴールにカフカは自分の孤独感や疎外感、父親との確執を投影していると言われている。

 父親の投げつけたリンゴが結果的に致命傷となったが、厄介物(=毒虫)を処理した父
親は自分の家族を守ったとも言えるし、彼の家族が取り戻した平和な生活は、一つのハッ
ピーエンドという見方もできる。

 リンゴが知恵の象徴ならば、その実が朽ちて果てた時、グレゴールの人間性も終わって
いたのではないか。愛する家族にグレゴールの想いは永遠に伝わらないままで。

 ある朝目覚めた自分が、全く違う存在になっていたとしたら。

 不条理で代替が利く世の中で自分と他者の関係をどう確立するか、という暗喩のように
も受け取れる作品であり、時をおいて読み返せば、新たな発見ができるかもしれない。

(by うるは。)

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