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第17回 読書会レポート

 芥川龍之介が精神を病みながら書いた晩年の作品「河童」。ある狂人が河童の世界に迷い込み、人間とは違う世界を体験していく物語です。河童の世界を舞台にしていながら、当時の政治、社会批判がパロディとして描かれていたり、芥川の芸術観、宗教観、死生観などさまざまなテーマが織り込まれている作品です。読者会では、次のような意見が出ました。

・芥川の文章は流れるようで美しい。
・かなり暗い雰囲気の作品だけど、よく考えたらこれは河童の世界の話なんだなと思うと、面白いなと思えてくる。
・もし、当時の社会に生きていてこの作品を読んでいたら、パロディとして笑える部分もあるのではないか。
・芥川は不倫していた。当時、姦通罪があったので、芥川のその罪に問われる恐れがあった。その女性について彼は「河童」と陰で呼んでいたので、もしかすると、この女性と本作品は何か関係があるのではないか。
・たくさんのことが書き込まれすぎていて、むしろ病的なものを感じる。病んでいる人間のパワーのすごさを感じる作品。
・短編ではあるが、正直、読みづらい作品。芥川が、一字一句、苦しみながら書いていたことがうかがえる。
・これだけ病んでいながらも、文章が破綻していないのはさすが芥川。
・河童は「この世に生まれてくるかどうか」を生まれてくる前に、自分で選択できるという特殊な制度を持つ。芥川は結婚をして子供が3人いた。こういうことを書いて、自分の子供が読んだらどう思うのか考えなかったのだろうか。
・当時は、とりあえず結婚して子供をもうけることが常識だったので、子供は作らねば ならなかったが、芥川の中には、むしろ、自分の子供には産ませてしまって申し訳ないという気持ちがあったのではないか。

★   ★   ★   ★   ★
 ちなみに、この作品を書いた2ヶ月後、芥川は睡眠薬を飲み自ら命を絶ってしまいます。

・精神病に始まり、精神病に終わる作品としては、海外では「ライ麦畑でつかまえて」があり、この作品には一応「生きよう」とする意思が見られる。しかし、芥川のこの作品には、「生きよう」という意思が見られない。
・生きることってかっこう悪いという考えが、当時の文人にはあったのではないか。芸術や美意識が先で、生活は後。日本の作家は、キリスト教圏の作家に比べ自殺率が高い。キリスト教圏では、自殺は宗教上許されることではないからだ。また、芥川の生きた時代には、そういったことに対するタブーもなかったのではないか。

参加者は11名。今回は題材の作風もあり、話がかなりディープな方向に行ってしまうところもありました。こういうちょっと重たいかな? と思える話を真面目に気楽にできるのも、読書会の醍醐味ってところでしょう。次回も参加したいです。

(by しみ)
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Author:東京読書会
古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

★「FRaU」(講談社)、『TOKYO BOOK SCENE』(玄光社)、NHK「ラジオ深夜便」、東京ウォーカー(KADOKAWA)で東京読書会が取り上げられました!


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