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第19回 読書会レポート

~第19回読書会レポート 川端康成『雪国』~


「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という有名な冒頭ではじまる川端康成の『雪国』

「白い」だとか、「一面の」といった修飾語がないにもかかわらず、暗いトンネルから急に視界いっぱいに雪世界が広がる様子を想像させます。

とにかく「文章が美しい」これが私の最初の感想でした。それは、今回の読書会に参加した多くの方も感じたようでした。


 ・文章が綺麗

 ・女の人の描写がエロい、やらしい

 ・蛾を使った死の描写も美しい。川端が推理小説で殺害シーンを書くのもよかったのでは?

 ・あいまいで、水彩画のような描写

 ・「愛してる」や「好き」といった言葉が出てこないので、一日に何度も「I love you」と恋人に言う外国の人が読んでも、理解しづらいかも 

 
 一方で、「悲しいほど美しい声」の持ち主である葉子についてもいろいろな意見がでました。

 その中でも、この作品の葉子の役割はなんだったのかという疑問が多かったです。それに関して


 ・島村、駒子、葉子の三角関係を書くことで話を盛り上げるため

 ・活発で、明るい駒子と、ミステリアスな葉子。対極な女性を描くため

 ・顔の描写が多い駒子と、声の美しさが繰り返される葉子。女性のさまざまな美しさを描くため


  という意見がでました。他にも葉子に関して


 ・『雪国』のタイトルから連想される女性のイメージは葉子の方だと思う

 ・死んだ行男の墓参りに毎日行ったり、廊下の陰からじっと睨んでいたりして怖い

 ・葉子視点で物語を見ていくと、面白いかも。駒子にずいぶん酷いことをされていて、可哀想でもある。

  行男が最期に会いたがったのは、看病し続けてきた葉子ではなく、駒子であったり、他にも、島村に宛てた手紙のお遣いを頼まれているから


 最後に、主人公の島村について。この物語は島村の視点で書かれています。

 そして彼は何度も「徒労」や「哀れ」といった言葉を登場させます。

 そのことについて、彼は二人の女性を愛しているようで、一途な駒子と距離がさらに縮まろうとすると、避けようとし、

 電車の窓ガラスに映る葉子に魅せられるが、実際に対面すると不安になる。

 “女性の美”を求めながらも、手に入れることができず、満たされない。本当は、彼自身がいちばん「哀れ」なのかもしれません。

(by詩史)
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