第28回 読書会レポート

十一月のそれほど寒くない日の事でした。私(わたくし)は例の通り四ツ谷駅の出口を抜けて、「しんみち通り」に向かいました。入ってすぐ左手にある喫茶室ルノアールの細い階段を上(あが)って、読書会の会場へとたどり着きました。今回は、二十名程が夏目漱石の『こころ』を持って集まり、二班に分かれて、感想を述べ合いました。私が座ったテーブルには女性が五名、男性は私を含めてやはり五名で、常連の方もいれば、初めての方もいました。


簡単な自己紹介をしてから、皆(みん)なが二言三言ずつ作品の印象を話します。私は、「先生とKとの間に特別な感情が芽生えていたのでは?」と意見するつもりだったのですが、他の方が「これは同性愛小説である!」と言うので、私は失策(しま)ったと思いました。先を越されたなと思いました。そうして、しばらくすると個々の登場人物に話題が移って行きました。


まずKについて、今回の参加者のみなさんは、「珠数の輪を勘定し」、「先生より背が高く」、「強い決心を有している」などの描写から、その性格や容姿を細かく読み取ったようでした。しかしこれはただ思い出したついでに書いただけで、実はどうでも構わない点です。ただそこにどうでもよくない事が一つあったのです。参加者の中で色々と話し合ってみると、「Kが好き!」という女性が多いことが分かったのです。


さて、肝心の先生についてですが、内面を吐露した長い遺書の部分を読むと、「自分のことしか考えていない」、「お嬢さんの気持ちに無関心」、「自分の中ですべて起承転結してしまっている!」など批判的な気持ちになるようです。しかし、私としては、自らの苦悩を浮き彫りにし、次の世代に生きた教訓を与えようとして、筆を執った先生に、少なからず感動したのです。そのことを言うべきかどうか随分迷ったのですが、私は躊躇(ちゅうちょ)して、口へはとうとう出さずにしまいました。


このように、『こころ』の登場人物については、各自(めいめい)の印象が異なっていたのですが、文体については、「表現や比喩が適切」、「丁寧でわかりやすい」、「外国語に翻訳される事も想定して書かれたと思う」など、参加者一同、好感を持ったようでした。


古典的な名作を、普段の仕事や学業の合間を縫って読むというのは、至難の業です。しかし、「次の読書会まで」という「締切」を意識するとそれほど苦もなく完読できるのです。読書会の後の食事会で色々と話し合ってみると、この点についても皆なが同じ意見でした。

(by 野良猫)
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古典文学の名作を読み、カフェでそれについて自由に語りあいます。
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まず、メンバーで順番に、その月の課題作品を決めてもらいます。
それを読んで、毎月第一日曜日、東京近郊の喫茶店に集まり、感想を語りあいます。

古典的な名作というのは、名前は知っていても、実際に読んだことがない場合が多いので、これを機会に読んでみよう、というのが主旨です。
古典的名作だけに、読んで損をすることはないでしょう。

参加される方の割合は、初めての方とリピーターの方が半々といったところです。

読書会の告知は、毎月下旬頃(読書会の45日ほど前)から始めます。

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