第39回 読書会レポート

~「草枕」 夏目漱石~

「夢みることより外に何ら価値を人生に認め得ざる一画工」が「非人情の世界を造りあげるべく飄然と家を出た」
自我ー世間ー日本ー西洋 落ち着き所を見出せぬのは漱石の時代も今も変りはしない・・そんな心持になると、峠道で飛ぶ雲雀の
「・・流れて雲に入って、漂うているうちに形は消えてなくなって、ただ声だけが空の裡に残るのかもしれない。」
そんな気配に包まれてみたくなる。

浮遊感と苦しみと背中合わせになっているような世界が好みで選ばせて頂きました。
ただ語り合うには難しい小説かもしれません、早速何を言いたいのかわからないという声が。
確かに主人公がひたすらぶつぶつ言っているだけとも思えますね・・このぶつぶつが面白いとも言えますが。

漢文と西洋の詩の引用が煩わしいかどうか。これは半々でした。意外と皆さんずんずん読んでしまうのですね。
主人公は「余」と随分古めかしく自称してますが、文中で「私は・・」と会話していると判明。この時代はまだ文語体の影響が強かったのでしょうか。
この時代の小説によく出てくる高等遊民という存在についての意見。「自分は生活に困らなければ充分、むしろ怠けてしまいそうで怖い」皆、真面目です!(汗)
裏山で那美さんが財布を渡す髭の男、これが手塚治虫の漫画に出てくる猿田彦?を思わせてならなかった!こういう個人的なイメージの世界、何となく共感できてイイね!です。

肝心の那美さんですが意外と?女性陣の支持が熱い!クールで自分を持っていてカッコいいとのこと。
主人公は「この旅中は人間も出来事も画中の点景として扱う!」などとのたまってますが、翻弄されまくりですからね。
聡明で多面体、最も男から遠い存在で女性そのものかもしれません。
そんな那美さんの顔にラスト浮かんだ「憐れ」さ。その解釈については残念、深く突っ込めずに終わりました。また機会あれば・・。

この小説には漱石の全てが入っているとの言葉が出て唸りました、確かに! 初期の軽みから苦しい場所に歩んでいく漱石にとってこれはちょうど道半ば
峠にさしかかっていろいろと見通せた時期だったのかもしれません。

所々のユーモアのある描写がおかしい素晴しいとの声が多かったですが、そう!文章を読むことの歓びを与えてくれる、そんな小説らしい小説が「草枕」だと思うのです。

(by ばるぼら)
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